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あらゆる事柄に関するレビューログ。 #kaibaricot
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2006年。フランス映画。

う〜ん。
そもそも書く必要がない気がする。
ひどすぎる官能映画ではないけれど。

この映画の監督は『ひめごと』で知られるブリソー。
彼は『ひめごと』の際、セクハラ論争で訴えられる。
映画の内容が内容のため、女優達に訴えられるんですね。
その実話をもとに『はじらい』を作ったという。

しかし、これは単なる弁明映画ではないでしょうか?

『はじらい』によれば、
彼は『ひめごと』という、
女三人レズビアンのオルガスムをテーマにした映画を撮る。
彼はあくまで監督という立場から女優には全く手を出さない。
傍観者を決め込む。
しかし、実は女三人は根っからのレズビアンではなく、
彼に見られることを望んでいた、
つまり彼を愛していた——
そうするうちに、感情はもつれ、彼の家庭も問題となり、
みんなの関係は破滅する。

といった具合。

私なんかは、「うそつけ!」と鼻で笑っちゃいますね。
「実話」とかパッケージの宣伝文句を鵜呑みにしてはいけない。
だって、ブリソー、『はじらい』のブリソー役の俳優さんみたく、
魅力的ではないですよ。
それどころか、なんだこの巨体は、と思う、
典型的なフランス人デブ。全く魅力がない。
絶倫とか、笑わせるなって感じですね。

美化しすぎてる。

たぶん、本当にこれはセクハラしたんだと思う。
彼はしょぼいと思う。
美化した弁解映画だ、これは。

人を見る目をもつなら、
まずは、もっと見る側として、自分の外見を鍛えて欲しいと、
私はつくづく、そう思う。


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1978年、カンヌ映画祭、パルムドール受賞作。

これは傑作。
イタリアはしっかりした映画の歴史を持つ国だけある。
とりわけこの映画は、
ネオ・レアリズモの系譜をしっかりと受け継ぎ、
エルマンノ・オルミの世界へと完全に昇華しています。

ネオ・レアリズモというと、
デ・シーカ『自転車泥棒』『靴みがき』
ロッセリーニの素晴らしい作品『無防備都市』
ピエトロ・ジェルミ『鉄道員』なんかがありますね。
どれも傑作揃いですが、社会問題を扱う作品が多い印象です。
しかし、『木靴の樹』は完全に農民へ特化した作品で、
他のネオ・レアリズモ作品と一線を画している。
(農民の生活も社会問題といえばそうですが……)

それにしても、ネオ・レアリズモ映画の良さはといえば、
これっぽちもセンチメンタリスムが入っていないこと。
徹底的なリアリストであることです。

私は根っからの論理的リアリストであるので、
こういう、淡々と見つめ続ける視点、
つまり三人称的視点は、私は好きですね。
神の視点、好きですね。

そして、今まさに、もっとも少ないのがこの三人称的視点です。

敬愛する伊藤計劃氏ですら、
「三人称は居心地が悪い」と言われていた。
確かに、あの空前の傑作『ハーモニー』でさえ、一人称。
私(わたくし)小説でした。

『木靴の樹』にも神は出てくるが、誰も信じていない。
信じたところでなんの特にもならないからです。
貧しい世界であればあるだけ、神が出没する。
神は全く救いの手を差し伸べない。
当たり前です、神はただ見ているだけに過ぎない。
というか、見ているかどうかもわからない。

なんだか、この視点は、ソンタグの言葉を思い起こさせる。
曰く、「撮る者は救えない、救う者は撮れない」
戦争カメラマンはまさにこういうジレンマに立たされるわけです。


まあ、それは別にこの映画で重要な問題ではない。

重要なのは、この映画がおそろしく淡々と描かれていることです。
自然が美しい、とか軽々しく言ってはいけない。
それは、あくまで東京砂漠に住む住人であるから、
そういう東京フィルターを通して見た、僻目に過ぎない。
自然も人間に対して全くの無関心。
農民にとっては、別に東京と大差ない空間です。

ベルガモ地方の、とても貧しい農民生活。
それにしてもテレジーナは美しいが。
まるでドストのソーニャみたい、と思う。

非常にいい映画でした。
オルミの映画は日本でほとんど公開されていないのが残念。

なんでイタリアって、こういうリアリスムが発展したんでしょう。
そして、なんで、日独伊三国同盟なのか、
最近、そんなことを考えております。





1981年。キシェロフスキ。

この映画でついに、
DVD化されているキシェロフスキの映画をすべてみたことに。

ポーランド国内でしか公開されなかった短編映画や、
ドキュメンタリーなどの小品も少なくなく、見たいのはやまやまですが、
残念ながらこれが限界。

キューブリックも絶賛する、独特の世界観をもつ監督です。

『偶然』は初期作品で、『傷跡』や『アマチュア』に続く佳作。
後に、何人かの監督が取った手法である、

主人公である男性が、
1、「もしもワルシャワ行きの電車に乗れた場合」
2、「もしもワルシャワ行きの電車に乗り遅れた場合」
3、「もしもワルシャワ行きの電車に乗り遅れ、
   ある女性と出会った場合」

という、3通りの可能性を描く。

そして、ただその電車に乗れたか乗れなかったかによって、
180度違った人生を歩むことになる。

結局、人生とは何が禍福を決めるかわからない。
そして、この3通りのどれもが、特に幸福であるとか不幸であるとは言い難い。
どれも同程度。
それぞれ、重苦しい人生がある。

人は、なんだかんだ言って、自分の意志以外の要素に人生を左右されることが多く、
かつ、それなりにどのような道であろうとも、一生懸命生きようとする。
と思いました。

佳き映画とは、常に誰かの人生をダイジェストで描いているから、
一本の映画を見ただけで考えさせられ、疲れます。

ポーランドの複雑な政治事情は相変わらず。
このような社会では、そもそも自分のやりたいこと、
やりたくないことの選択が難しい。

そして、自分のやりたいことをするのが難しい社会の方が、
おそらくは、よっぽど生きやすい、と思うのは私だけでしょうか。

さすがキシェロフスキ。
素晴らしい映画でした。


1986年。ゲオルギー・ダネリヤ監督。
旧ソ連全土で1520万人を動員した、幻の傑作。異色SF映画。


確かに面白いです。

私は常日頃から言っているのですが、
面白いSFとは、必ず人間の可能性の追求になり、心理的な物語になる、と。
したがって、いわゆるロボットやらスターウォーズのような派手な戦争、
または異星人との交流みたいな、
そういう物理的なSFには、個人的には興味ない。

心理的SFという意味では、もっとも優れた連作を、ポーランドの天才、
スタニスワフ・レムが、ファースト・コンタクト三部作と言われている、
『エデン』、『無敵』、『ソラリス』で残しています。
(私の大好きなレム!たぶん、私が一番好きな作家。)
『ソラリス』などは、本当の意味で、人間の深層心理の論理的追求だし、
こないだ紹介させて頂いた、伊藤計劃『ハーモニー』も、同じです。

『ソラリス』は、やはりソ連のタルコフスキーが、
すばらしい映画に作り上げております。

どうも、東欧系の人というのは、おそらくは政治的・歴史的制約のせいで、
心理的洞察に長け、風刺と皮肉、諧謔に富んだ物語を作るのがうまいらしい。

『キン・ザ・ザ』も、当時のソ連を、かなり皮肉っており、
なおかつ作品としても相当面白いものに仕上がっている。

この映画はかなり複雑な映画です。
少し、ストーリーを。

普通のロシア人ウラジミールと、グルジア人ゲデバンの二人が、
ひょんなことから、キン・ザ・ザ星雲の惑星ブリュク星へと飛ばされる。
これが驚くほど「ひょんなことから」なんですね。
悪ふざけみたいなきっかけ。

ブリュク星というのは砂漠の惑星。
非常に進んだ科学力をもっているのに、なぜか原始人みたいな見た目。
機械は凄い性能なのに、ポンコツ臭丸出しで、とても錆びついてる。
この何とも言えない論理矛盾。
そのうえ、人種差別もひどい。

地球人にはほとんど理解出来ない環境の違い。
コミュニケーションはとれているようで、ほとんどとれていない。
理解しあったかと思えば、全く理解出来ていない。

ディストピア映画と言われていますが、これはディストピアではない。
それは地球人的観点ですね。
これはこういう世界なのです。
幸福でも不幸でもない。
つまりは別世界です。

レムはそういうことがとてもよく分かっていた。
H・G・ウェルズが『宇宙戦争』を書いて以来、
SFとは、異星人と出会った場合、仲良く交流するか、
戦争するかの二択しかなくなってしまった。
ところが、レムは、出会っているのにコンタクトすらとれないし、
お互いに理解し合うことは不可能である、ということを描きました。

これは人間同士でもそうですよね。


・・・・『キン・ザ・ザ』に戻すと、

とても切ない物語でもあるんですね。
ラストは特に切ない。
地球に帰るのは簡単じゃない。

とてもいい映画でした。


1996年の作品。フランス映画ですが、監督はポーランドの鬼才。
(鬼才とは使いふるされた言葉)
本国ポーランドでは大ヒットしたとか。

しかし、わけのわからない映画です。
一部にとても人気のある、カルトムービーのような感じ。
支離滅裂で、無茶苦茶な映画ともいえる。

アンジェイ・ズラヴスキーはワイダの助監督も務めた、
わりと有名な監督ですが、狂気を秘めた女性と、
そんな女性に翻弄される男を描くのがうまいらしい。

確かに、『ワルシャワの柔肌』に出てくる女性も、
かなりの狂気に取り憑かれている人です。
というか、まるっきり鳥居みゆき。

ジャンル的にはエロティックムービーにカテゴライズされていますが、
エロティックというより、意味不明。

かなりえぐい、ぐろいシーンもある。
たとえば、肉をミンチにする工場のシーン。
内容と絡めているんでしょうが。

内容がない、カルトムービー。

せめて、ポーランド語の映画にして欲しかった。

ワルシャワはほんと、暗く、汚い。


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海馬浬弧
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女性
自己紹介:
言語学者、哲学者、文学者、サイバネティック学者である、
海馬浬弧による本、映画、アニメ、音楽、その他、
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私生活については一切書きません。7カ国語堪能。
独断と偏見に充ち満ちているため、不快に思われる方もいらっしゃるでしょうが、これも現代の歪みの一つだと思って、
どうかお許し下さいませ。
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