あらゆる事柄に関するレビューログ。
#kaibaricot
1986年。ゲオルギー・ダネリヤ監督。
旧ソ連全土で1520万人を動員した、幻の傑作。異色SF映画。
確かに面白いです。
私は常日頃から言っているのですが、
面白いSFとは、必ず人間の可能性の追求になり、心理的な物語になる、と。
したがって、いわゆるロボットやらスターウォーズのような派手な戦争、
または異星人との交流みたいな、
そういう物理的なSFには、個人的には興味ない。
心理的SFという意味では、もっとも優れた連作を、ポーランドの天才、
スタニスワフ・レムが、ファースト・コンタクト三部作と言われている、
『エデン』、『無敵』、『ソラリス』で残しています。
(私の大好きなレム!たぶん、私が一番好きな作家。)
『ソラリス』などは、本当の意味で、人間の深層心理の論理的追求だし、
こないだ紹介させて頂いた、伊藤計劃『ハーモニー』も、同じです。
『ソラリス』は、やはりソ連のタルコフスキーが、
すばらしい映画に作り上げております。
どうも、東欧系の人というのは、おそらくは政治的・歴史的制約のせいで、
心理的洞察に長け、風刺と皮肉、諧謔に富んだ物語を作るのがうまいらしい。
『キン・ザ・ザ』も、当時のソ連を、かなり皮肉っており、
なおかつ作品としても相当面白いものに仕上がっている。
この映画はかなり複雑な映画です。
少し、ストーリーを。
普通のロシア人ウラジミールと、グルジア人ゲデバンの二人が、
ひょんなことから、キン・ザ・ザ星雲の惑星ブリュク星へと飛ばされる。
これが驚くほど「ひょんなことから」なんですね。
悪ふざけみたいなきっかけ。
ブリュク星というのは砂漠の惑星。
非常に進んだ科学力をもっているのに、なぜか原始人みたいな見た目。
機械は凄い性能なのに、ポンコツ臭丸出しで、とても錆びついてる。
この何とも言えない論理矛盾。
そのうえ、人種差別もひどい。
地球人にはほとんど理解出来ない環境の違い。
コミュニケーションはとれているようで、ほとんどとれていない。
理解しあったかと思えば、全く理解出来ていない。
ディストピア映画と言われていますが、これはディストピアではない。
それは地球人的観点ですね。
これはこういう世界なのです。
幸福でも不幸でもない。
つまりは別世界です。
レムはそういうことがとてもよく分かっていた。
H・G・ウェルズが『宇宙戦争』を書いて以来、
SFとは、異星人と出会った場合、仲良く交流するか、
戦争するかの二択しかなくなってしまった。
ところが、レムは、出会っているのにコンタクトすらとれないし、
お互いに理解し合うことは不可能である、ということを描きました。
これは人間同士でもそうですよね。
・・・・『キン・ザ・ザ』に戻すと、
とても切ない物語でもあるんですね。
ラストは特に切ない。
地球に帰るのは簡単じゃない。
とてもいい映画でした。
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海馬浬弧
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自己紹介:
言語学者、哲学者、文学者、サイバネティック学者である、
海馬浬弧による本、映画、アニメ、音楽、その他、
あらゆることに関するレビューログ。
私生活については一切書きません。7カ国語堪能。
独断と偏見に充ち満ちているため、不快に思われる方もいらっしゃるでしょうが、これも現代の歪みの一つだと思って、
どうかお許し下さいませ。
リンクは才能豊かな知人の方々なので、ぜひ。
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