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あらゆる事柄に関するレビューログ。 #kaibaricot
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Chris Marker "La Jetée" 1962

クリス・マルケルの映画は見ることのできるものが少ない。
そんななか、La Jetéeは最もクリス・マルケル映画では見やすいものだ。
DVD化されているし、この26分程度の短い異色作は
いつ見ても詩的で美しい。

クリス・マルケルはかなり変わった経歴の持ち主である。
それはよく知られていること。
いまではウィキペディアを見ればすぐわかる。

親日家でもあり、日本に関連するドキュメンタリーを数多く撮影している。
なかでも『ラ・ジュテ』とともにDVD化されている『サン・ソレイユ』、
あるいは黒澤明に関する『AK』、他にも『不思議なクミコ』等色々ある。
またヴィム・ヴェンダースの『東京画』にすらちょっと出ている。

それでもクリス・マルケルはあまり知られていない。
ドキュメンタリー映画界の巨匠であり、いわゆる「シネマ・ヴェリテ」派。
フレドリック・ワイズマンとかそういうドキュメンタリー監督と異なり、
編集(モンタージュ)に非常なこだわりをもった一派である。

モンタージュは原理的にはドキュメンタリーと相反する行為である。
モンタージュとは本質的にフィクションのための作業なのだ。
なぜかというに、編集(モンタージュ)とは、ある現実を、
監督の意図に従って、恣意的に並べ直し、切り貼りする行為だからである。

ゆえに「シネマ・ヴェリテ」一派は、
その冠するところの「ヴェリテ(真実)」に近づくためには、
あえて「フィクション」の作業が必要と考える一派なのである。
この考え方は近松門左衛門の「虚実皮膜」に似ていると思う。

もう一人有名な「シネマ・ヴェリテ」派は、
これまた私の大好きなジャン・ルーシュがいる。
ジャン・ルーシュは民俗学的なドキュメンタリーが多いが、
傑作『人間ピラミッド』や『ある夏の記録』がある。


ドキュメンタリー映画が最も好きな映画のジャンルである私は
フレドリック・ワイズマンなどのいかにもアメリカ的な徹底したリアリズムと、
フィクションとリアリズムをごちゃまぜにするシネマ・ヴェリテ、両方好きです。

ただ、クリス・マルケルは決して単なるドキュメンタリー作家ではない。
この『ラ・ジュテ』しかり。
写真家でもあり文筆家でもある。
『ラ・ジュテ』を見ればそのことはすぐ分かるだろう。
彼自身が撮影した印象的な写真群を駆使し、
フォト・モンタージュと言われる手法を最も上手く機能させた
素晴らしいフィクションも作成している。


残念ながら去る7月29日に鬼籍に入られたが、
この機会にぜひどこかでレトロ・スペクティブなり、
DVD全集なり出して欲しい。
私もあまり多くの作品を見ることが出来ていない。


いまだに『ラ・ジュテ』を見たときの衝撃は忘れられない。
当時は大学生で、クリス・マルケルのことを何も知らず、
ふと新宿のTSUTAYAで手にとって借りたら、大当たりだった。
それから、クリス・マルケルのことを色々調べた。
フランスに留学していたころは彼のDVDで手に入るDVDは
あらかた手に入れ持ち帰ったし、
彼の象徴であるところの「Monsieur Chat」



の落書きを探してパリの端から端まで歩き回った。

機会があればぜひ見て欲しい。
まずは『ラ・ジュテ』から、そして『サン・ソレイユ』へ。
もし機会があれば『ベトナムから遠く離れて』も。

またもしも、お気に召したなら、新宿ゴールデン街にある有名店
『ラ・ジュテ』へも足を運ばれたらいかがだろうか。


P.S
なお、私はいまもクリス・マルケルのように生きようと思っているし、
ここ数年でそのような人生になるだろうと確信しています。

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溝口健二監督の代表的傑作。


この映画を見たのは二度目です。
随分久しぶりに見ました。

はじめてこの映画を見たのは京橋のフィルムセンターです。
前にこのブログ上で紹介した『日本映画ベスト150』では14位にランクインしてて
見たい見たいと思っていたのですが、
なかなかこの映画を見ることが出来ずにいました。

そうそう、
『日本映画ベスト150』をまとめたサイトを発見しました。
日本映画ベスト150
個人的にはこの時点の順位が非常に正しいと思います。
もしも現時点で「日本映画ベスト150」をやったとしたら、
たぶんとても笑える順位が出来上がると思う。

それはともかく、この映画を再び見る機会を与えて下さった、
店長に感謝です。


再び見始めてみると、意外としっかり覚えているもので、
田中絹代が素晴らしいのです。
三船とか宇野重吉とか出てるけど、全然目立たない。
田中絹代は千両役者というか。銀幕映えしますね。
カリスマ性がある。
声もよく通るし、すれっからしの関西弁も、
そこはかとなく品性を感じさせる。
そういう役。

すべての女性にとって、重要な物語なので、
とくに女性には見て欲しいと思う。
このような物語の類型は
たぶん外国の作品とかでも枚挙に遑がないでしょう。
仏文系の頭からすると、
モーパッサンの『女の一生』、
フローベールの『ボヴァリー夫人』しかり。

でも、私は一代女のほうが優れていると思います。
第一、「一代女」という表現がいい。
一代っきりなんですね。
二代目とかそういうのを欲していない。
でも英語になると、ご覧の通り「Life of Oharu」になる。
これは『女の一生』の原題「Une Vie」に近いニュアンスでしょうが、
一代女という、『源氏物語玉の小櫛』でいうところの
「もののあはれ」感がないですね。


それに、『西鶴一代女』は最後まで現実的なのが好きです。
ラストはひどく淡々としている。
観客に同情を乞うわけではない。
ただ淡々としている。そこがいい。
全編を通じてユーモアもある。分かりやすい話。

『雨月物語』のほうがより詩的かもしれませんが、
私は『西鶴一代女』のほうが面白いと思います。


この夏の終わりにいかがでしょう。
古い日本映画の中に新しいものがあるとつくづく感じます。



樋口一葉の代表的な3つの短編を映画化。
はじめに『十三夜』丹阿弥谷津子、芥川比呂志。
次に『大つごもり』を私の好きな久我美子。
最後が『にごりえ』で最近お亡くなりになった淡島千景、山村聡、宮口精二。

樋口一葉のこれらの小説は、前に読もうとして挫折しました。
どうも歴史的仮名遣が苦手で、読み切れなかったのです。
24歳で亡くなった樋口一葉を知る上で、
映画から入るというのは、
入門者向けで良いのではないでしょうか。

話はいずれも結構面白いです。
そして演出も決して派手でなく、いいと思います。
殊に『にごりえ』は面白かった。

もう一度小説にチャレンジしてみようかな、と思いました。

今井正監督は恋愛映画の傑作『また逢う日まで』
社会派の『真昼の暗黒』、『キクとイサム』などがあります。
現代ではあまり顧みられない監督の一人かと思いますが、
いずれも粒揃いです。

樋口一葉の小説に挫折したなら、ぜひ映画から入ることをお薦めします。

1957年、増村保造監督作。
根上淳、野添ひとみ、左幸子、船越英二。


この映画も、以前ご紹介したことのある、
文藝春秋社刊の『日本映画ベスト150』の50位くらいに載っていました。

しかし、この映画、今見てみると全く面白くない。
それどころか、つまらない、馬鹿げた映画でさえあると私は思う。
ただ、それでも発見はいくつかあります。
1、野添ひとみさんが綺麗であること。
2、左幸子は相変わらずエネルギッシュでエキセントリックな役
    がとても合っているということ。
3、病院というところの旧体質さは今も昔もそう変わっていないな、
    ということ。

そしてこの映画の演出がうるさい感じなんですね。
台詞が多すぎるし、増村さんの悪いときの癖で、
まるで私の大嫌いな市川崑みたいなテンポの映画にしている。

増村監督には何本か傑作もありますが……
イタリアのチェントロで学んだ、風変わりな監督でもあります。

でもこれは面白くないですよ。




脚本は新藤兼人。原節子に逢初夢子。滝沢修に森雅之。


この映画を見たのは二度目。
高校の頃持っていたこの本で40位、50位くらいに入っていた。

この本はとてもいい本でした。
1989年、文藝春秋刊。
この本を参照して日本映画の重要な作品を見漁ったのです。


さて、本作『安城家の舞踏會』はチェホフの
『桜の園』を下敷きに、没落していく華族の最後の舞踏會を
描いた佳作です。
しかしながら、今見てみると、なんか馬鹿みたいだな、
と思ってしまう内容であることも否めない。
でも、公開された当時の戦後の人からしても、
なんて子供じみた人たちなんだろう、とやっぱり思ったと思う。

それでも原節子はやっぱり凄いし、
大好きな森雅之のようなニヒルな俳優は、
ちょっと彼以降に見あたらないなあと思うのです。

吉村公三郎監督は今日ではあまり見られていない監督の一人でしょう。
本作以外に代表的なものには『偽れる盛装』があります。
新藤兼人は言わずと知れたご存命する日本映画史上欠かせない監督。

アクチュアリティはないかもしれない。
無理矢理探し出すことはできるけれども。
それでも、華族制度廃止の問題と絡めた本作には、
どこか現代のニートとかそういう問題とも関わりがあるのかもしれない。

安城家の舞踏會はいかにして終わり、
そして終わったところから何が始まるのか。

旅はいつも終わりから始めないといけない。

確か、そんな言葉が安部公房の
伝説の処女作『終わり道の標べに』にあったと思うのです。
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プロフィール
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海馬浬弧
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女性
自己紹介:
言語学者、哲学者、文学者、サイバネティック学者である、
海馬浬弧による本、映画、アニメ、音楽、その他、
あらゆることに関するレビューログ。
私生活については一切書きません。7カ国語堪能。
独断と偏見に充ち満ちているため、不快に思われる方もいらっしゃるでしょうが、これも現代の歪みの一つだと思って、
どうかお許し下さいませ。
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