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あらゆる事柄に関するレビューログ。 #kaibaricot
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ls mômeとは小娘という意味で、ピアフのあだ名。
castorがボーヴォワールをさすのと同じこと。

見終わるのにすごい時間かかってしまった。
邦題は『ピアフ 〜愛の讃歌〜』

大好きな女優コティヤールが出ていて、アカデミー主演女優賞を受賞。
これはフランス女優としてはシモーヌ・シニョレ以来の快挙。


正直、映画としてはつまらない。
ありがちなダイジェスト・バイオグラフィー映画。
このご時世、偉大な生きたレジェンドがいないから、
どうもバイオグラフィーばっかり。

ピアフは確かにすごい。
あの才能豊かな、作家でかつジャズメンでもある、
ボリス・ヴィアンをして「ピアフは電話帳を歌っても泣かすことができる」
と言わせしめたほど。
(ただ、これには二重の意味があり、ヴィアン一流の皮肉ですらある)


なるほど、何度聞いても『Hymn à l'amour』は確かに泣ける。
なんていうか、これは決意の歌なんだ。
歌詞を読めば一わかる。
全く、こんな決意の歌聞いたことない。
すべて、si tu me le demandais(もしあなたがそれを望むなら)
で片付けるし、
極めつけはここでしょう。
Si un jour la vie t'arrache moi. Si tu meurs, que tu sois loin de moi. Peu m'importe, si tu m'aimes. Car moi je mourrai aussi...
(もしいつか人生が私からあなたを引きはがして、
もしあなたが死んでしまって、遠くへ行ったとしても、
そんなことは大したことじゃない、あなたが私を愛しているのなら。
なぜなら私もいつかは死ぬのだから・・・)直訳的ですみません。

これは大いなる開き直り。
私を愛しているのなら、死んでしまったとしても気にしない、
という感じが Peu m'importe というフレーズにありありと出ている。
しかも、私もどうせ死ぬ、とは恐れ入りました。


コティヤール迫真の演技も、ありふれた演出で台無し。
話の落ちどころは、例によってボクサーの恋人が飛行機事故で亡くなるくだり。

個人的には、
ピアフの「padam padam」は非常に好きです。
戸川昌子さんが、この曲を歌っているときに、
不倫相手の奥さんにつめかけられたというエピソードも好きです。



ピアフは力強い。

すべての偉大なるものは、必ず力強い。
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渋谷、bunkamuraにて。

ゲンスブールに興味がないとあまり見ようという気がおこらないかも知れません。

どうでもいいことだけれど、私は「ゲンズブール」と、
「ズ」は濁ると思う。
この映画を見てもそうだと思いましたが、
もし詳しい方いらしたら教えて下さい。
この場合、sは一つで濁るんではないでしょうか?

それはさておき、ゲンズブール好きには馴染み深い固有名詞がたくさん出ます。
たとえばボリス・ヴィアン。BB。フランス・ギャル。バーキン。
アズナブールにグレコ。
監督はBDで有名なスファール。
個人的には、スファールの演出はよく効いている場合と、
いまいちな場合とありました。

とりわけ、スファールの絵はなかなかにいいのですが、
あのわけのわからないでっぷりとしてグロテスクな、
まるでスファールの盟友であるクレシーの「ビバンダム」的な怪物には、
少しひきました。
もちろん、それは、ゲンズブールの「劣等感」の表象であるにはせよ、
あの怪物は少しB級でした。

でも、話は面白いですよ。
のっけから最後まで。

ゲンズブールは思っていたよりも臆病で繊細です。
もっとめちゃくちゃな奴かと思っていたけれど、
嫌々身につけたピアノが身を助けることに。

何事においてもそうですが、
人一倍劣等感の強い人間こそ、強烈な作品を創造する人だと思います。
醜男であるということがどれほど大きく彼の作品と人生に影響したことか。

そして、ユダヤ人であるということ。
この自己規定がいかに大きなものであるのか、
スファール自身ユダヤ人であるからして、よく理解できるのでしょう。
この点は、日本人にはほとんど理解できない。

ユダヤ人という人達がいかなる人達であるのか、
触れあわないと、そのキブツや関係の構築がよくわかりません。
たとえば過越祭など。


この映画は、劣等感の物語。
原題はGainsbourg, Vie héroïque、すなわち、
「ゲンズブール、その英雄的人生」


英雄は常に、英雄コンプレックスから生まれるのです。




1973年

極端な寡作監督、スペインが生んだ巨匠、エリセ。
記念すべき長編第一作は、とても不思議な映画であった。
スペイン語の原題は「ささやき」というよりむしろ「精神」
spirit, esprit, etc...

非常に有名な映画ですので、どこかでこの特異なタイトルを、
きっと耳にされたことがあるのではないでしょうか。

人間をミツバチに見立て、個々の心模様を、
細やかにたどる、冷静なカメラ・アイ。

時は1940年スペイン。
内戦が終了し、フランコ独裁政権誕生。
とてもとても静謐な映画です。
象徴的な映画と言われますが、
何を象徴しているのかわからなくても十分楽しめるでしょう。
私はスペインの歴史を詳しく把握していませんが、
それでも何かしらの抑圧的な雰囲気は感じることができる。

ブニュエルの空前の傑作『ビリディアナ』もスペイン。
不思議な国。


こんな静かな映画を作ることができるとは。
溝口健二の『山椒大夫』を見て、監督を志した、
というエリセのエピソードもう頷けます。

ある人に倣い、引用でしめくくりましょう。

すなわちマルロー曰く、
「静謐は悲劇よりもなお悲痛である」

この映画にふさわしい。



The Runaways

ミュージックビデオ監督、写真家として独特の仕事を続ける、
フローリア・シギスモンディが監督。
彼女は、シンディ・シャーマンや、今ちょうど写美でやっている、
ベッティナ・ランス、ナン・ゴールディンなどの系譜を確実に受け継いでいる。
私は、全員好きです。

ランナウェイズ。
本格的なロックをやるガールズバンド。
ツインギターでヘヴィーな音をガンガン出す。
代表曲である『チェリーボム』をはじめて聞いたのは高校の頃。
ローリーがお勧めしてて聞いたんですね。
相当インパクト強かった。
あの下着姿、ガーターベルトで歌うシェリー・カリー。
バンドのメンバーは平均年齢16歳という信じられない若さ。

思いました。
やっぱり、アメリカは凄い。
日本人には絶対無理だな、と。
パワフルというか。
16、17歳くらいで、あんな生活考えられない。
ジョーン・ジェットの腹のくくり方とか半端じゃない。
日本のガールズロックで、あそこまでヘヴィーな音は奏でられない。
ZONEとか思い出して、そう思いました。

私の場合。
70年代ロックが大好きで、ロックの女王と言えば、
Joan Jettに他ならなかったです。
ランナウェイズ解散後、ジョーン・ジェットのソロデビュー作、
第1作『I Love Rock & Roll』(1981)はいつ聞いても素晴らしい。

ラストでクリムゾン&クローバーがかかると、
ほんと泣きそうでした。
他にも、ジョーン・ジェットの曲がかかると泣きそうだった。
Love is pain とか凄くいい曲なんですよ。
ロックで。
スローなロックが出来ると本物です。

それにしても、
ジョーン役の売り出し中若手女優、
クリステン・スチュワートがそっくりすぎる。
シェリー役のダコタ・ファニングはあんまり似ていない。

そして、ランナウェイズが解散に向かう契機は、
日本でのLIVEの頃だったんだなあということがよくわかった。
日本ってよくもわるくも、
色んなことに対する反応とか受容とかが他国より早いから、
彼女たちの離反のきっかけが、日本であったというのは、
なんとなくわかるような気がする。
日本ではいち早くランナウェイズを受け入れられる土壌が出来ていた。
(ただし、今は様々な国の状況に対する反応は、
少し遅い気がしないでもない)

私がこの映画を見てつとに感じたのは、
シェリー・カリーはある意味反抗心だけで、あそこまで行ってしまったから、
続けることが出来なくなった。
それに対してジョーン・ジェットは、本当に人生をロックに賭けていた。
たぶんそれは、彼女のセクシャルな部分に理由があるのではと思う。
ジョーン・ジェットは明確に、自分が家庭に入れない、
結婚できないことを自覚していたんだと思う。

解散寸前のランナウェイズをなんとか保とうと、
奮闘するのだけど、
ジョーン・ジェットがあんなに真面目で、
いい奴だったとは。
ほんと、泣けてくる。
彼女はシェリーを失い、
まるで妻と愛人を両方失った人の大打撃を食らう。

そこからDavid Bowieを思い出し、再起する。
彼女の居場所はロックにしかないから。

・・・他。

プロデューサー役のキムもいい。
あのイカれた役は最高にいい。
彼は、アリス・クーパーのプロデューサーでもあったとか、
「なるほど!」と独り合点しました。
「チェリー・ボム」をあんなに適当につくったんだろうか、と思う。

シェリーがDavid Bowie好きだったというのが、
個人的にはかなりグッと来ました。
Bowieは私の中でもカリスマなので。
グラムロックの頂点。かっこよすぎる。
今でも非常に良く聞きます。



Crimson & clover お聞き下さい。



スペインを代表する監督であることに間違いありません。

73年の処女長編『ミツバチのささやき』が高い評価を得ているので、
そっちから見たかったのですが、近くのレンタルビデオ屋にはなく。
逆に2作目の『エル・スール』があったのでこちらを見ました。

73年『ミツバチのささやき』、82年『エル・スール』とあるように、
実に寡作な監督なんですね。
こんな寡作な人、聞いたことない。
一体その間、なにしてご飯を食べているんだって思う。
たぶん監督は本職じゃないんでしょうね。

現在までに、ちゃんとした長編が3作、短編が2作という、
驚くべき少なさですが、どれもがやたらに高い評価。

確かに、『エル・スール』おもしろいです。
スペイン映画にしては異例の静けさ。
映像は暗闇を特に美しく描くし、ストーリーも詩的。

でも、佳作って感じです。
大作ではない。
野心作でも、問題作でもない。
どちらかというと小品です。
がつんと殴られるような映画ではない。

この映画について、一言だけ言わせてもらうと、
ラストの父親の決断が、どうも納得いかない。
あんな繊細な親父っているのだろうか。

と私は思いました。


ゆっくり落ち着きたい時などにいかがでしょう。

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海馬浬弧
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女性
自己紹介:
言語学者、哲学者、文学者、サイバネティック学者である、
海馬浬弧による本、映画、アニメ、音楽、その他、
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私生活については一切書きません。7カ国語堪能。
独断と偏見に充ち満ちているため、不快に思われる方もいらっしゃるでしょうが、これも現代の歪みの一つだと思って、
どうかお許し下さいませ。
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