あらゆる事柄に関するレビューログ。
#kaibaricot
1978年、カンヌ映画祭、パルムドール受賞作。
これは傑作。
イタリアはしっかりした映画の歴史を持つ国だけある。
とりわけこの映画は、
ネオ・レアリズモの系譜をしっかりと受け継ぎ、
エルマンノ・オルミの世界へと完全に昇華しています。
ネオ・レアリズモというと、
デ・シーカ『自転車泥棒』『靴みがき』
ロッセリーニの素晴らしい作品『無防備都市』
ピエトロ・ジェルミ『鉄道員』なんかがありますね。
どれも傑作揃いですが、社会問題を扱う作品が多い印象です。
しかし、『木靴の樹』は完全に農民へ特化した作品で、
他のネオ・レアリズモ作品と一線を画している。
(農民の生活も社会問題といえばそうですが……)
それにしても、ネオ・レアリズモ映画の良さはといえば、
これっぽちもセンチメンタリスムが入っていないこと。
徹底的なリアリストであることです。
私は根っからの論理的リアリストであるので、
こういう、淡々と見つめ続ける視点、
つまり三人称的視点は、私は好きですね。
神の視点、好きですね。
そして、今まさに、もっとも少ないのがこの三人称的視点です。
敬愛する伊藤計劃氏ですら、
「三人称は居心地が悪い」と言われていた。
確かに、あの空前の傑作『ハーモニー』でさえ、一人称。
私(わたくし)小説でした。
『木靴の樹』にも神は出てくるが、誰も信じていない。
信じたところでなんの特にもならないからです。
貧しい世界であればあるだけ、神が出没する。
神は全く救いの手を差し伸べない。
当たり前です、神はただ見ているだけに過ぎない。
というか、見ているかどうかもわからない。
なんだか、この視点は、ソンタグの言葉を思い起こさせる。
曰く、「撮る者は救えない、救う者は撮れない」
戦争カメラマンはまさにこういうジレンマに立たされるわけです。
まあ、それは別にこの映画で重要な問題ではない。
重要なのは、この映画がおそろしく淡々と描かれていることです。
自然が美しい、とか軽々しく言ってはいけない。
それは、あくまで東京砂漠に住む住人であるから、
そういう東京フィルターを通して見た、僻目に過ぎない。
自然も人間に対して全くの無関心。
農民にとっては、別に東京と大差ない空間です。
ベルガモ地方の、とても貧しい農民生活。
それにしてもテレジーナは美しいが。
まるでドストのソーニャみたい、と思う。
非常にいい映画でした。
オルミの映画は日本でほとんど公開されていないのが残念。
なんでイタリアって、こういうリアリスムが発展したんでしょう。
そして、なんで、日独伊三国同盟なのか、
最近、そんなことを考えております。
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海馬浬弧
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自己紹介:
言語学者、哲学者、文学者、サイバネティック学者である、
海馬浬弧による本、映画、アニメ、音楽、その他、
あらゆることに関するレビューログ。
私生活については一切書きません。7カ国語堪能。
独断と偏見に充ち満ちているため、不快に思われる方もいらっしゃるでしょうが、これも現代の歪みの一つだと思って、
どうかお許し下さいませ。
リンクは才能豊かな知人の方々なので、ぜひ。
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