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あらゆる事柄に関するレビューログ。 #kaibaricot
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1968年、ジョン・カサヴェテス監督作。
ジーナ・ローランズ主演。

これは、今年1番の傑作でした。
素晴らしい映画です。
カサヴェテス渾身の1作です。
自宅を抵当に入れ、稼いだお金をすべてつぎ込み撮った作品。
これほどの素晴らしい作品にあたったことは本当に久しぶりでした。

なんて言ったらいいか、様々なことを描ききった映画なので、
うまくまとめられそうにありません。

ある中年夫婦を主体に描いている映画なのですが、それだけではありません。
ジーナは娼婦役で、彼女のもとを訪れる、典型的なアメリカ人たち。
そいつらの、無意味で空っぽな酔っぱらいの会話。
そして、娼婦と寝る手順に表れる、
衒いや恥ずかしさや自尊心、嫌悪、など様々な感情の渦。
ここが本当に凄い。
人間の汚さというか醜さが露わになりすぎる。
FACESという名の通り、とにかく今じゃありえない、顔のアップの連続。
顔顔顔。

これを見ると、結婚とかしたくなくなるだろうし、
人間不信になるだろうし、人間の醜さを見せつけられる。
ある意味、絶望的な映画です。

極めつけは、お金持ちの奥さまたちがクラブで若い燕をひろってくるところ。
その奥さまたちの自尊心、自制心、そして好奇心と肉欲のせめぎ合いが、
またあからさま。

まれに見る傑作。

やはりカサヴェテスは凄い。
他にもすばらしい傑作『こわれゆく女』、
『グロリア』などがあります。

思うに、カサヴェテスは中産階級出身じゃないかな。
主婦、ハウスワイフを描くのが非常に上手い。
『こわれゆく女』もかなりの傑作で、ジーナが出ています。

ジーナ・ローランズって私は大好きです。
ぜひご覧あれ。

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1994年、ロシア・フランス共同制作。
アカデミー最優秀外国語映画賞受賞作品。
原題は偽りの太陽って感じでしょうか。

ニキータ・ミハルコフが主演、監督。
実の娘であるナージャ・ミハルコフが娘役で出ている。

初めは、なんかパッとしない映画、と思ってみていました。
舞台は1930年代のロシア。
主役は実在したコトフ大佐。
革命の英雄で、スターリンとも昵懇。

これはロシアの複雑な歴史を知っていないと理解しがたい映画です。
つまりは30年代の大粛清を、淡々とある特殊な視点から描いたものです。

マルーシャに恋をする男ミーチャ。
しかしミーチャはコトフ大佐により外国へ追いやられ、
その後コトフ大佐は、マルーシャと結婚する。
10年経ってミーチャは帰って来るも、
かつて好きだった女性はすでにコトフ大佐に奪われている。
だから彼は嫉妬、私怨から、コトフ大佐を「密告」する。
もちろん、コトフ大佐に密告されるような、理由はない。
当時のロシアは、ちゃんとした裁判など行われず、
密告されただけで、銃殺へ直結していたのでした。

重要なシーンに登場する火の玉はなんなのか。

いくつかのサイトでは、みなさん、
あれこそが「偽りの太陽」という解釈を与えています。
しかし、本当にそうなのでしょうか。

あれは、なんていうか、死んでいった人々、
というか、ある日突然連れ去られ、言ってみれば「夜と霧」へ消えていった人々の、
魂、想い、みたいなものではないでしょうか。

偽りの太陽はスターリンそれ自身であると思うのです。
ラスト近くの気球のシーンからも、そんな気がします。

いずれにせよ、あの火の玉は、この映画にとって重要なものですね。

岩波DVD、シリーズ、日本のドキュメンタリー、政治・社会編

全3巻なので、見るのに苦労しました。
なかなか見終わらなかった。
それに、1巻の中に4〜5本もドキュメンタリーが入っているので、
重くって。

ドキュメンタリーはもちろん、フィクションより重たい。
すっと軽く見られるものではない。
それに、政治・社会編とくるとなおさらです。

例えば、第1巻に入っている『空の少年兵』は特攻隊の話ですし、
『生きていてよかった』被爆者のお話です。
原爆関係の映画は多くて、
第3巻の『私のなかのヒロシマ』、『おばあちゃん頑張る』など。
第2巻には羽仁進監督のドキュメンタリーもあるし、
傑作『日本の悲劇』で有名な亀井文夫監督のものも何本かあります。

個人的には、『母子手帳』、『町の政治、べんきょうするお母さん』が面白かった。
『町の政治』は国立の話なんですが、
昔の国立ってあんな田舎だったんだなあと思う。
立川にあった米軍基地のせいで、いかがわしい売春宿がたくさん出来かけて、
それをなんとかしようと立ち上がる市民のお話。
『母子手帳』は赤ちゃんを産み育てるための啓蒙映画です。

秋の夜長にいかがでしょうか。


2002年のドキュメンタリー。
ハンセン病患者さんたちのお話です。

率直に感じたことを書きます。

草津温泉のすぐ近くにある、栗生楽泉園というハンセン病患者の療養所を中心に、
そこに暮らす主に三人の方に焦点が当てられています。
あの草津温泉のすぐ近くに、今でもこういう療養所があることがまず驚きでした。

でもね、
一つ思うのは、こういう無責任な事を言うと良くないのは分かっていますが、
現代のような厳しい社会で生きて行く必要のない生活、
自分の好きな絵だけを書いていたり、
脱俗してのんびり暮らせる生活というのは、少し羨ましい気もする。
これはあくまで表面的な面だけを見て感じたことなので、
どうか聞き流してください。
病には病の苦しみがありますが、多くのものを失って、
得られるものも場合によってはあるのです。
逆もまた真ですが。

今でも印象的な思い出を一つ。
これもまた無責任な発言で申し訳ありません。

パリにいたとき、確かヴォージラール通りで、
角を折れたら、正面から、完全に顔が潰れた背の高い男性が歩いてきたので、
思わず肝をつぶしました。
この映画に出てくるようなハンセン病の方々とは比べものにならないほど、
潰れた顔でした。
安部公房の『他人の顔』や、
あとジョルジュ・フランジュ『顔のない眼』とか思い出しました。

あれはもしかしたらハンセン病だったのかな。
突然のことだったので、失礼なリアクションをとってしまったかもしれません。

閑話休題。

本作に出てくる、谺さんの頭脳のしっかりしていることには驚かされます。
さすがに原告団代表をされているだけある。
大正天皇皇后、貞明皇后の話をするときの、
谺さんの語り口と想いが、いかにも若々しい、力強い。

かつて、神谷美恵子もハンセン病に人生を捧げ、
『砂の器』にも登場する。

みるべきドキュメンタリーです。


1960年。原題『Shadows』

カサヴェテスのデビュー作。傑作です。
すべて、improvisationによって撮られた映画。
16ミリカメラをハーレムに持ち込んで、その時その場で即興的演出。

improvisationは、
いわゆるヌーヴェル・ヴァーグの監督に好んで用いられた手法と言われています。
(実際にはそうでもなかったらしいので、こういう言い方にしました)

現代の監督はあまり採らない手法ですが、
例えば、脚本がないという意味では、
ウォン・カーウァイ監督なんかのやり方に少し近い。

『アメリカの影』は見てすぐわかりますが、リアルです。
16ミリは基本的には、ルポルタージュなんかによく使われたものだし、
手持ちカメラの動きや、即興演出も、まるでドキュメンタリーですね。

不思議なことですが、映画がデジタルでキレイな映像になればなるほど、
映画らしさを感じられなくなる。
ツルっとした表面的な映像になると、
逆にリアルさを感じなくなるのはどうしてでしょうか。
目で見えている世界は、デジタルに近いのにね。

「粒子」によって成り立つフィルム映像は、見てて、
「映画だな」っていう特別感があります。
別世界感があります。
それだけに、35ミリよりもなお、16ミリは新鮮です。

以上が形式面。

内容は、一言で言うと、アメリカの人種問題です。
黒人と白人のハーフの家庭に生まれた、上から男・男・女の三兄妹の物語。
とりわけ、妹の話には焦点が当てられています。
上記のShadowsのジャケット写真も、その妹です。
チャールズ・ミンガスの曲もベストマッチ。

本作はアメリカという国の「自由」が
括弧付きであること、一筋縄ではいかない難しさを描いている。

私的には、真ん中の青年ベニーが、
ルー・リードに似ててかっこいいし、レリアはかわいいと思った。

なんていうか、暗くて、切ない映画なのです。
でも、なんとか這い上がろうとする映画でもあります。

ひどくアメリカらしい映画でした。
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海馬浬弧
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女性
自己紹介:
言語学者、哲学者、文学者、サイバネティック学者である、
海馬浬弧による本、映画、アニメ、音楽、その他、
あらゆることに関するレビューログ。
私生活については一切書きません。7カ国語堪能。
独断と偏見に充ち満ちているため、不快に思われる方もいらっしゃるでしょうが、これも現代の歪みの一つだと思って、
どうかお許し下さいませ。
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