あらゆる事柄に関するレビューログ。
#kaibaricot
1973年、ジャン・ギャバン、アラン・ドロン。
邦題『暗黒街のふたり』というのは明らかにおかしい。
キャスティングだけを見れば、そう言いたくなります。
でも、この映画には全く「暗黒街」は出てこない。
それどころか、要するにこれは、今では撤廃された、
フランスにおける死刑制度(フランスは最近までギロチンでした)
が問題になっている映画です。
暗黒街というのは意訳ですらない。
それどころか、もっとありふれた町で、
元犯罪者が生活をしていく難しさを描いた映画だから、
味気ないタイトルかもしれませんが、
町の二人、とか、そういうタイトルの方が、
あるいは良かったかもしれないと思います。
本作は名優ジャン・ギャバンの力があってこその映画です。
ジャン・ギャバンはつくづく名優です。
フランス映画の基本的な名作にはほぼすべて出ている。
『大いなる幻影』とか『望郷』とか。
私は、フランソワーズ・アルヌールと共演している、
『ヘッドライト』が一番好きですし、
ゾクゾクさせるラストシーンがある、やっぱりドロンとの共演、
『地下室のメロディー』も素晴らしい。
たいてい、ギャバンは悪役的なヒーローなんですが、
『暗黒街のふたり』では悪役どころか、犯罪者を更正させる保護司。
彼は性善説、犯罪者は環境によって作られると考えている。
それに対し、ミシェル・ブーケ演じるゴワトロー刑事は性悪説。
悪人は生まれながらの悪人と思っている。
私はこの映画をみて思ったのですが、
人が、ある人を悪人と決めつけ、思い込むと、
その人はいつの間にか悪人になっていってしまう。
これは不幸な映画です。
陪審員制度の問題点もついている。
もちろん『12人の怒れる男たち』のように、
現実はいい方向へ転がっていかず、死刑が言い渡される。
ギロチンです。
死刑制度を描いた映画は色々あります。
最近見たのではキシェロフスキの『殺人に関する短いフィルム』
大島渚の傑作『絞首刑』
死刑におもむくシーンは、いずれも重苦しい。救いがない。
千葉大臣が死刑を見学しましたが、
法務大臣たるもの、皆、すべからく死刑を見学すべきと思います。
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黒澤明監督のロシア映画。
モスクワ映画祭金賞、アカデミー外国語映画賞受賞。
一言で言うと傑作。
2時間以上の大作ですが、全く見飽きない。
黒澤明監督はやはり日本が生んだ一番スケールの大きい監督でした。
『デルス・ウザーラ』はロシアでは知らない人がいないと言われる、
国民的文学作品です。
ロシア人探検家であるアルセーニエフの極東ロシア探検記なのです。
つまり実話ですね。
シベリアの厳しいタイガの中で出会う、猟師デルス・ウザーラとの交流。
黒澤映画の中では、なぜかあまり見られていない映画ですが、
スケールの大きさといい、映像美といい、素晴らしい作品です。
はっきり言って、黒澤映画でも三本の指に入る。
なによりもまず、この映画はロシア映画です。
ほとんどすべてロシア人スタッフ。
オールロケ。
徹底的にロシアのタイガで撮影。
デルス役を演じたマクシム・ムンズクはデルス以外の何者でもない。
それにしてもシベリアの自然が凄い。
ハンカ湖畔で道に迷ったデルスとアルセーニエフが夜という、
文字通り死に直面したとき、もの凄い雪風が吹きすさぶのですが、
あれは、なんといったらいいのか、とてつもない風です。
『八甲田山』を思い出しました。
しかし『八甲田山』は雪、とにかく雪ですが、
シベリアは違う。
タイガです、針葉樹の密林です。荒野です。
そして野生の虎。
老いのせいでデルスは銃の照準がうまくつけられなくなり、
アルセーニエフとその家族の好意でハバロフスクに行くも、
町の生活に耐えられず、再び森へ帰る。
そしてやるせない悲劇。
ひどく人間くさい映画です。
デルスが森で生きていく様は、なにか考えさせられるものがあります。
彼は、すべてのものを擬人化している、
つまり人間と同等に尊重しているのです。
原作も読みたくなりました。
黒澤明はやはり別格です。
小津なんか、黒澤を前にするとまったくの小物ですね。
監督:イングマール・ベルイマン
イングリット・チューリン、ヴィクトル・シェーストレーム
非常に優れた映画です。
題名からするとあまりそそられないタイトルにもかかわらず、
いろんな意味で野心的な映画です。
まず、師匠であるシェーストレームを主人公に起用し、
なおかつかなり手ひどく批判するという手法がすばらしい。
そしてある一日のことを描いただけなのに、夢などのシーンを駆使し、
多くの考えさせられることを盛り込むことに成功しています。
イーサク・ボルイ医学博士は、
名誉博士号授与式に出席するため、車で遠いところにある大学へ向かう。
どうやら問題をかかえているらしい息子の妻と、
そして昔の恋人と同じ名前のサーラ、サーラの友人二人を道中のっけることに。
途中、イーサクがなんどかまどろんで見る夢は、
かなり不快な夢です。
イーサクを徹底的に痛めつけるような、彼のこれまでの所行を裁く夢。
「老い」、「自己中心的」とたびたびののしられる。
苛烈な批判です。
妻が浮気するシーンを思い出させられたり、苦行です。
そんなイーサクの生き様や家族に、
どうしようもない孤独と屍の連鎖を見て取る、息子の妻。
彼女は子供が出来て生もうとしたら、夫に反対されたのです。
また、自分の子供もこの不気味な連鎖に巻き込まれるのではないかと不安に思う。
奇しくも名誉博士号の称号を得る日に、
彼は自分に愚者の烙印を押すわけです。
厳しい批判と否定。
しかしそれはたちまち自分自身にかえってくる自己否定であり自己批判です。
私はベルイマンとかなり似ている家庭感を持っているかもしれないと思う。
特に「連鎖」という言葉を使う点は、ひどく似ている。
彼は、常にこのテーマです。
ベルイマンは素晴らしい映画がほんとに多い。
監督:イングマール・ベルイマン
撮影:スヴェン・ニクヴィスト
イングリット・チューリン、ハリエット・アンデルセン、リヴ・ウルマン。
キャメラマンとして大好きな、スヴェン・ニクヴィストの撮影。
女優はスウェーデン映画界の大女優ばかり。
監督はスウェーデンの天才、ベルイマン。
この映画を見たのは、何度目でしょう。
私はもう、4回くらい見た気がします。
ベルイマンの映画には、いまだかつてはずれにあたったことがない。
彼は、かなり苛烈なサディストです。
そういう意味でも非常に映画監督に適していると思います。
スウェーデンには、ベルイマンの師匠であり、
俳優としても優れている、ヴィクトル・シェーストレーム監督がいます。
つまり、スウェーデン映画は歴史的土台がしっかりとあるのです。
閑話休題。
『叫びとささやき』ですが、サディスティックな映画です。
三姉妹の凍てついた人間関係とその使用人の話なのですが、
のっけから、子宮癌に苦しむ、次女アングネスの苦痛の叫びが始まる。
この次女アングネスの苦しみが半端じゃない。
これでもかというくらい、苦しみもだえる。
アグネスは死ぬまで、徹底的に肉体を痛めつけられる。
はっきり言ってこんな苦しみ方、見たことない。
日本人の一体どの女優が、こんな役をやれるのでしょうか。
文字通り、苦しみ、半狂乱にのたうちまわるアングネス。
それを見ていられない、長女カーリン、三女マリーア。
彼女たちも、血塗られた幻想の虜になっている。
それは言ってみれば、ささやき、でしょうか。
暗く、そして悲観的な映画です。
生きている長女も次女も、まさに屍的人生を送っている。
その憎しみと倦怠に耐えきれなくなりつつある。
一番怖いのは、死んだはずのアングネスが、
死体なのに動き出す、使用人アンナの、マリア・デラ・ピエタ的幻想です。
あれは気持ち悪い。
生きるということがこれほど苦痛に充ち満ちているとは。
さすがにやりすぎたと思ったのか、ベルイマンは、
一応、それでも最後には、穏やかなシーンをいれています。
とても素晴らしい映画です。
苦痛に苦しむアングネスは、それでも綺麗です。
シシー・スペイセク。トミー・リー・ジョーンズ。
アカデミー7部門ノミネート。
シシー・スペイセクはこの映画で主演女優賞を獲得。
アメリカ、カントリー界の大御所ロレッタ・リンの伝記映画。
原題は、Coal Miner's daughter という。
ロレッタはブッチャー・ホラーというケンタッキー州の炭鉱の娘として生まれた。
兄弟姉妹がたくさんの貧乏大家族。
13歳で結婚。
そしてカントリー歌手として大成する。
なんだか、こういう映画を見てて思うのだけど、
いつも、ある一定の流れがあります。
はじめはなんとなしにはじめたことが。
↓
いつのまにやら成功しはじめ。
↓
そしてスランプに陥り。
↓
しかし苦難を乗り越え成功する。
いつもこの流れ。
みんなこういう風に生きていくの。
大成ってこういうこと。
そういう意味では、伝記映画のこの流れに少し飽きがきた気もする。
若かりし日の、トミー・リー・ジョーンズは今よりもワイルドで強そう。
なかなか気がつかなかった。
それにつけても、あの『キャリー』でキャリーを演じ、
一気に有名人となったシシー・スペイセクは歌がうまい。
とっても上手。
all songs sung by シシー・スペイセクとダンジェロ。
キャリーの時も変な顔だな〜と思っていたけど、
やっぱり変な顔でした。
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私生活については一切書きません。7カ国語堪能。
独断と偏見に充ち満ちているため、不快に思われる方もいらっしゃるでしょうが、これも現代の歪みの一つだと思って、
どうかお許し下さいませ。
リンクは才能豊かな知人の方々なので、ぜひ。
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