忍者ブログ
あらゆる事柄に関するレビューログ。 #kaibaricot
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


集英社新書
たまには新書について書こうと思います。


まず、私は、「語学で身を立てる」つもりはありません。
が、ここ数ヶ月、わけあって、数カ国語を同時に勉強中です。
英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、そして韓国語もやっています。
(ロシア語、ポーランド語もわずかに)

本書にも詳しく指摘されていますが、
つとに思うのは、英語という言葉の特殊性です。
日本人は、外国語というと、すぐに英語を考えがちで、
英語教育に慣れ親しんでいますが、他のヨーロッパの言語をしっかり学ぶと、
より英語というものがよく分かります。

まず英語には名詞に性がありませんし、
ゲルマン系の言葉にみられる、格変化もありません。
しかし、ドイツ語やフランス語を学ぶと、
文章の構造をしっかりと学ぶはめになり、より論理的な読解力が培われます。

たとえば、英語は、しばしば形容詞がどこにかかっているか分からず、
また動詞の変化も最小限に抑えられている言語であるため、
語順が非常に重要視されている言語です。
そのため、それぞれの語が孤立し、非常に抽象的な言語なのです。

ところが、フランス語やドイツ語がもつ、名詞の性は、
形容詞がどの名詞にかかっているかを明瞭に示し、
また、関係代名詞の先行詞も英語に比べると、明示されている場合が多いです。

英語は、単語と単語をならべ、ある程度伝わってしまう面もある、
抽象的な言語なんですね。
だからこそ、多言語同時に学びつつ、英語にもアプローチするという方法が、
より効率的である、と考えられるわけです。

なお、本書とは関係ありませんが、韓国語と日本語は非常に似ています。
今度、書こうと思いますが、
蓮池薫さんの『蓮池流韓国語入門』(文春新書)に、重要な類似点として、
日本語と韓国語の語順を挙げていますが、これは大きな利点です。
(厳密には語順が一緒ではない場合もありますが)
両者とも、言語学的に言えば膠着語という言語に属しております。
遠く離れたフィンランド語も、膠着語です。

語学談義は、まだまだ尽きないのですが、
本書を読むと、
いわゆるマンツーマン教育が流行っている語学学校の正しい使い方、
セレブが好むインターナショナルスクールの無意味さがよくわかります。

どの言語を学ぶにせよ、日本語を疎かには絶対にできないということを痛感します。

気が向いたらぜひ。

明日は、電撃文庫の火付けラノベについて書こうかなーと思っております。


PR

三島由紀夫も絶賛した、SF史上最高傑作と誉れ高い作品。

クラークの想像力の強靱さに脱帽しました。

人類が宇宙に飛び立つ時、突如、地球の空を蔽った大艦隊。
人類のこれまでの歴史は幼年期に過ぎず、新しい時代がはじまろうとしていた——

とても切ない話です。
人類の長い営為が、実はすべてむなしいものであったということを、
さらに上の存在、「オーバーロード」たちの出現により知らしめられる。
「オーバーロード」とはよくいったもので、
神を越える存在、ということですね。
しかしながら、「オーバーロード」さえ、
さらに上の存在により支配されているということが判明します。

こういうものを読むと、人間の人生のむなしさを感じます。
一年のはじめにいかがでしょうか。



やっと読み終えました。

当時、中央公論の編集長だった宮脇俊三さんの、
国鉄(現JR)全線を乗り尽くした記録。
日本ノンフィクション大賞受賞作でもあり、
数々の大御所の作家達が、その文体、内容を絶賛しております。
かくいう私も、宮脇さんに触発され、いわゆるプチ「乗り鉄」になりました。

現JRは、赤字路線をほとんど廃してしまったため、
今現在、JR全線を乗り尽くそうと思ったら、宮脇さんの頃の、
5分の1くらいの苦労ですむでしょう。

驚くべきは、当時、要職に就いていて、
恐ろしく忙しいはずの宮脇さんが、このような偉業を成し遂げたということ。
金曜の夜になるたびに、夜行列車に飛び乗る宮脇さん。
もちろん、家族はいます。お子さんもいます。
だから、普段は何も言わない奥様も、時には、
「また行くの」と呟いてしまう。

年末年始、ゴールデンウィーク、休みという休みを悉く、
この全線乗りつぶしという作業に費やす。

そして、宮脇さんほど時刻表を熟読している人物であるからこそ、
特急に鈍行で追いつき、
同じ時間に発着するはずの列車を乗り継ぐ、という、
推理小説顔負けの軽業をやってのけるのです。

山崎正和氏が解説で面白いことを書いておりますが、
確かに、電車の路線とは、
本来、日本全国を等質価するものです。
ですが、宮脇さんの描き出すものは、等質価できない、日本の「地方」なのです。

私個人的には、福岡は田川、直方、を走る炭礦線群です。
いまでは、ほとんど廃線となってしまいましたが、
当時は凄いごちゃごちゃ、縦横無尽に走り回っておりました。

ちなみに、宮脇さんが最後に残してしまった路線は足尾線でした。

これは、現在は第三セクターが運営している、
わたらせ渓谷鐵道です。通称、わ鐵。

私は偶然にも、この路線に乗ったことがありますが、
宮脇さんとほぼ同じで、足尾銅山の坑道入り口がある、
通洞駅までしか行ったことがなく、その先の、足尾、間藤を残しております。

渡良瀬川沿いに走るわ鐵、途中、銅山の頃の廃墟になった工場が、
何とも言えないはげ山を背景に、異様な景色です。
ぜひ、日光ではなく、足尾へ、おいでませ。

鐵道旅行をしたくなったら、ぜひこの本をご参照下さい。
かくいう私も、日本全国を鐵道で旅しようと思っています。


プロレタリア文学・戦争文学の秀作。
忘れられた作家の黒島伝治。

私の最近のテーマは、女性・戦争・性・労働・誘拐・死体・主張なので。

陰鬱な話です。
要するに、シベリア戦線で戦っている日本兵が、
八甲田山よろしく遭難し、雪に埋もれ、春になり死体がみつかり、
渦巻ける烏の群は、死体を啄んでいるというお話。

救いはありません。
淡々と描かれています。

ロシア人の女性の取り合いから、ある一個中隊が、上官の怒りを買い、
もっとも厳しい地域に送り込まれ、遭難してしまう。

「彼等が、いくらあせっても、行くさきにあるものは雪ばかりだった。
・・・雪が降った。
白い曠野に、散り散りに横たわっている黄色の肉体は、埋められていった。
雪は降った上に降り積もった。倒れた兵士は、雪に蔽われ、暫くするうちに、
背嚢も、靴も、軍帽も、すべて雪の下にかくれて、彼等が横たわっている痕跡は、
すっかり分からなくなってしまった。
 雪は、なお、降り続いた。……」
『渦巻ける烏の群』より引用。

映画『八甲田山』の雪の描写を思い出しました。
あの凄まじい雪との戦い。

あの真っ白な世界こそ、死の世界。

いつか私も、八甲田山の雪を見てみたいと思っています。

2009年刊。砂子屋書房。
2010年、日本詩人クラブ新人賞受賞。

すべて、ありのままに述べさせて頂きます。
それがこのレビューログの意義ですので。

近年稀にみる、すばらしい詩集です。
最近の詩は、何を書いているのか、何が言いたいのか、
単なる言葉遊びのような、空虚な詩ばかり(芝刈り)の中、
倉本さんの詩は、明らかに、優れています。

この詩集と出会ったきっかけは、ブックオフでした。
100円のコーナーに紛れていました。
新刊ですし、どうやら初めは半額の1250円という値札がつけられていたらしく、
裏表紙には無造作に貼られた100円と1250円の値札。

読まれた形跡の全くない本。

私は、全く聞いたことのない、この詩人の名前を見、
装丁にも少し惹かれ、なんとなく本を開いてみたのでした。
金曜の夜遅く。

すると、中に挟まっていたのは、倉本さん直筆の「謹呈」
つまり、この本の前の所有者は、きっと、倉本さんご本人から、
この本を貰ったのでしょう。
ちゃんと読みもせず。

そんな風に思いながら、なんとはなしに読んで見た詩、
「氷結」「畳の目」
非常にいい詩でした。

以下、上から目線のように、レビューを書いてしまうことを、
どうかご容赦下さい。

詩集の名前の通り、いずれの詩も、
東京の真夜中に、孤独の中、何かを試みようと書いていたんだろうなあ、
と強く思い起こさせる叙情があります。

「東京の」というのは、少なくとも私にとっては重要なことです。
なぜなら、東京の真夜中は、地方の真夜中と違い、特別だからです。
何かを目指す者にとって、東京という場所は、日本の中で最も重要な場所です。
はっきり言って、それがスタート地点だとも言えるくらいで、
そこにいなければ、モンパルナスにいない画家が、
いくら実力があっても相対的には知られなかったように、
意味がないことなのです。
日本で戦うには、東京しかないのです。

東京の夜が、多くのこういう想いを隠していることを、
彼女は物語ってくれます。
ある時は官能的に、そしてある時は厳しく。

まさに、真夜中のパルス。

そして、言葉の選択が非常に論理的なのです。
昨今、なんとなく雰囲気にまかせて詩を書く人が多いですが、
倉本さんの詩は、必然性があります。
だから一遍の詩には、「断定」のような強さもあるのです。

これは、傑作詩集です。
あとから知ったことですが、この詩集が新人賞に選ばれるのは、
当然でしょう。

何かを志す者であれば、ひどく心に響くものがあります。
倉本さんがこれらの詩を、日常生活に追われながらも、
家に帰って、皆が寝静まった真夜中、静寂のなかに書いていた姿が、
すごく思い浮かびます。
なぜならそれは私自身の姿でもあるからです。
これは決して感傷ではなく、意志です。

謹呈本にも関わらず、ブックオフに売ってしまった、
どこかの誰かに、感謝したいと思います。

アマゾンや版元である砂子屋書房サイトで購入可能。
本当にお勧めの詩集です。
 HOME | 3  4  5  6  7  8  9  10 
Admin / Write
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
フリーエリア
最新コメント
[06/03 マスターの知人]
[03/08 桐一葉]
[12/03 あみぴろ]
[11/16 あみぴろ]
[10/19 あみぴろ]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
海馬浬弧
性別:
女性
自己紹介:
言語学者、哲学者、文学者、サイバネティック学者である、
海馬浬弧による本、映画、アニメ、音楽、その他、
あらゆることに関するレビューログ。
私生活については一切書きません。7カ国語堪能。
独断と偏見に充ち満ちているため、不快に思われる方もいらっしゃるでしょうが、これも現代の歪みの一つだと思って、
どうかお許し下さいませ。
リンクは才能豊かな知人の方々なので、ぜひ。
バーコード
ブログ内検索
P R
カウンター
アクセス解析
忍者ブログ [PR]