あらゆる事柄に関するレビューログ。
#kaibaricot
2009年刊。砂子屋書房。
2010年、日本詩人クラブ新人賞受賞。
すべて、ありのままに述べさせて頂きます。
それがこのレビューログの意義ですので。
近年稀にみる、すばらしい詩集です。
最近の詩は、何を書いているのか、何が言いたいのか、
単なる言葉遊びのような、空虚な詩ばかり(芝刈り)の中、
倉本さんの詩は、明らかに、優れています。
この詩集と出会ったきっかけは、ブックオフでした。
100円のコーナーに紛れていました。
新刊ですし、どうやら初めは半額の1250円という値札がつけられていたらしく、
裏表紙には無造作に貼られた100円と1250円の値札。
読まれた形跡の全くない本。
私は、全く聞いたことのない、この詩人の名前を見、
装丁にも少し惹かれ、なんとなく本を開いてみたのでした。
金曜の夜遅く。
すると、中に挟まっていたのは、倉本さん直筆の「謹呈」
つまり、この本の前の所有者は、きっと、倉本さんご本人から、
この本を貰ったのでしょう。
ちゃんと読みもせず。
そんな風に思いながら、なんとはなしに読んで見た詩、
「氷結」「畳の目」
非常にいい詩でした。
以下、上から目線のように、レビューを書いてしまうことを、
どうかご容赦下さい。
詩集の名前の通り、いずれの詩も、
東京の真夜中に、孤独の中、何かを試みようと書いていたんだろうなあ、
と強く思い起こさせる叙情があります。
「東京の」というのは、少なくとも私にとっては重要なことです。
なぜなら、東京の真夜中は、地方の真夜中と違い、特別だからです。
何かを目指す者にとって、東京という場所は、日本の中で最も重要な場所です。
はっきり言って、それがスタート地点だとも言えるくらいで、
そこにいなければ、モンパルナスにいない画家が、
いくら実力があっても相対的には知られなかったように、
意味がないことなのです。
日本で戦うには、東京しかないのです。
東京の夜が、多くのこういう想いを隠していることを、
彼女は物語ってくれます。
ある時は官能的に、そしてある時は厳しく。
まさに、真夜中のパルス。
そして、言葉の選択が非常に論理的なのです。
昨今、なんとなく雰囲気にまかせて詩を書く人が多いですが、
倉本さんの詩は、必然性があります。
だから一遍の詩には、「断定」のような強さもあるのです。
これは、傑作詩集です。
あとから知ったことですが、この詩集が新人賞に選ばれるのは、
当然でしょう。
何かを志す者であれば、ひどく心に響くものがあります。
倉本さんがこれらの詩を、日常生活に追われながらも、
家に帰って、皆が寝静まった真夜中、静寂のなかに書いていた姿が、
すごく思い浮かびます。
なぜならそれは私自身の姿でもあるからです。
これは決して感傷ではなく、意志です。
謹呈本にも関わらず、ブックオフに売ってしまった、
どこかの誰かに、感謝したいと思います。
アマゾンや版元である砂子屋書房サイトで購入可能。
本当にお勧めの詩集です。
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海馬浬弧
性別:
女性
自己紹介:
言語学者、哲学者、文学者、サイバネティック学者である、
海馬浬弧による本、映画、アニメ、音楽、その他、
あらゆることに関するレビューログ。
私生活については一切書きません。7カ国語堪能。
独断と偏見に充ち満ちているため、不快に思われる方もいらっしゃるでしょうが、これも現代の歪みの一つだと思って、
どうかお許し下さいませ。
リンクは才能豊かな知人の方々なので、ぜひ。
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