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あらゆる事柄に関するレビューログ。 #kaibaricot
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本来、この作品は漫画の項目に分類すべきでしょうが、
アフタヌーンで連載していた本作を読んだことはなく、
私はアニメを見たので、そちらについて。

かとりまさる、とは林葉直子さんのペンネーム。
女流棋士とミステリーを融合させた佳作。

もちろん、細部を見ていけば、
ちょっとおかしいなという点は、少なからずある。
しかしストーリーとキャラ設定はとても良くできているので、
小さな瑕瑾は気にならない。
それどころか、欠点を補って余りある。

林葉直子さんについては賛否両論色々あるでしょうが、
女流棋士として活躍しなお、このような話が書けるというのは、
疑いなく一つの才能である。

将棋のことについて、多少なりとも「穴熊」とか「居飛車」とか、
戦法について知っているとなお面白い。

将棋漫画としては『月下の棋士』を思い出しますが、
これもなかなか面白い。
それぞれのキャラクターが将棋にも反映されるというのは、
『シンシナティ・キッド』のスタッド・ポーカー、
『ヒカルの碁』の碁、
など一つの面白いツールです。

ミステリーの関連で言えば、かつてヴァン・ダインがポーカーを使って、
犯人を暴き出すという、息詰まる心理戦を展開したのを思い起こします。

こういう戦略的なゲームとミステリーを絡めるのは、
とても面白い。
ストーリー構成の上で非常に勉強になります。

主人公、紫音は、幼い頃に両親を殺され、
それ以来話すことができない。
筆談で意思疎通をする女の子。そして棋士。
彼女が棋士として勝っていくにつれ、追い迫ってくる過去——。
一体誰が敵で味方なのか。
将棋の盤面のような心理戦が展開される。

言ってみれば、紫音は「王」
同じく女流の沙織は「角」
歩は「飛車」

かな。

ちなみに私は将棋の駒では「角」が好きです。
トリッキーでユーモラスな動きをする角が好きです。

将棋好きにはおすすめな良質ミステリー将棋アニメ。

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渋谷、bunkamuraにて。

ゲンスブールに興味がないとあまり見ようという気がおこらないかも知れません。

どうでもいいことだけれど、私は「ゲンズブール」と、
「ズ」は濁ると思う。
この映画を見てもそうだと思いましたが、
もし詳しい方いらしたら教えて下さい。
この場合、sは一つで濁るんではないでしょうか?

それはさておき、ゲンズブール好きには馴染み深い固有名詞がたくさん出ます。
たとえばボリス・ヴィアン。BB。フランス・ギャル。バーキン。
アズナブールにグレコ。
監督はBDで有名なスファール。
個人的には、スファールの演出はよく効いている場合と、
いまいちな場合とありました。

とりわけ、スファールの絵はなかなかにいいのですが、
あのわけのわからないでっぷりとしてグロテスクな、
まるでスファールの盟友であるクレシーの「ビバンダム」的な怪物には、
少しひきました。
もちろん、それは、ゲンズブールの「劣等感」の表象であるにはせよ、
あの怪物は少しB級でした。

でも、話は面白いですよ。
のっけから最後まで。

ゲンズブールは思っていたよりも臆病で繊細です。
もっとめちゃくちゃな奴かと思っていたけれど、
嫌々身につけたピアノが身を助けることに。

何事においてもそうですが、
人一倍劣等感の強い人間こそ、強烈な作品を創造する人だと思います。
醜男であるということがどれほど大きく彼の作品と人生に影響したことか。

そして、ユダヤ人であるということ。
この自己規定がいかに大きなものであるのか、
スファール自身ユダヤ人であるからして、よく理解できるのでしょう。
この点は、日本人にはほとんど理解できない。

ユダヤ人という人達がいかなる人達であるのか、
触れあわないと、そのキブツや関係の構築がよくわかりません。
たとえば過越祭など。


この映画は、劣等感の物語。
原題はGainsbourg, Vie héroïque、すなわち、
「ゲンズブール、その英雄的人生」


英雄は常に、英雄コンプレックスから生まれるのです。




原作は久住昌之さん。1994-1996年にかけて連載。
今では文庫本で手に入ります。

このたび、谷口ジローさんが「シュバリエ」を受賞されたとのこと。
そこで私の大好きなジロー先生の作品、『孤独のグルメ』を。

ジロー先生は、フランスのBDから多大な影響を受けている。
とりわけ、ジャン・ジロー、通称メビウスからの影響が非常に濃いという。
でも一見したところ、浦沢直樹さんの絵に似ているような気がする。
とくに主人公の「鼻」からはその類似を感じました。
個人的には、
メビウスの代表作『アルザック』は宮崎駿の『ナウシカ』に、
とても影響が濃いと思う。


さて、『孤独のグルメ』は非常に地味な漫画です。
そして、とてもリアルな漫画なのです。
社会人であれば特に、もちろんそうでなくても、
誰しもこの漫画の主人公の心境がわかると思うし、
その舞台となる地味な土地土地の空気を知っていると、
なおさらよくわかるのです。

たとえば大山。石神井公園。池袋西武の屋上。
こういった場所の空気を、とてつもなくうまく表現している。

そして題名の通り、「孤独」なのです。
会話はほとんどない。
ほぼモノローグ。
そしてご飯を食べるだけ。
なのになんでこんなに面白いのか。
コンビニ飯の回さえある。

ときどき、読み返したくなる。
読み終わったはずなのに。
それこそが『孤独のグルメ』の魅力。

もしも、一点だけリアルでない点をあげるとすれば、
主人公が女優と恋仲だったという点だけか。

これも、実は先日私に『ゴルゴ13』の
ベストスナイプ集を下さった方のお薦めで読みました。

男性女性問わず、大人の方にお薦めしたい作品です。



先週末ある人から貰って読みました。

1984年の時点で、まるで今の原発事故を見据えたかのような、
とてもアクチュアリティのある話。
ストーリーは『マスター・キートン』などで傑作も多い、勝鹿北星氏らしい。

スリーマイル島の事故が1979年だから、
その事故を受けての、綿密な取材で構想されたストーリーに違いありませんが、
勝鹿さんのストーリー・テラーぶりには脱帽する。

今でこそ、「建屋」とか「水素爆発」とか「冷却水喪失」というフレーズは
一般的に理解されていますが、1984年の時点で、
これほどリアリティのある話を作り上げるとは凄いことです。

とりわけ驚くのは結論というか。

よく練られた政治問題と原発は不可分な関係として語られ、
そのような政治問題と絡み合う限り、
原発を人間の力で制御出来ないのなら、
原発を持つべきではない、という結論。

すなわち、原発それ自体に悪はなく、
扱う人間側に問題があるのだから、
扱わない方がいい、という考え方。

う〜ん。
これは今まさに、知識人達の間で比較的受け入れられている意見では、
ないでしょうか。

まさか84年の時点でこんな強靱な想像力を持つ人がいるとは。
もちろん、こういう想像を可能にしたのは、
博覧強記の勝鹿氏が、綿密な取材と検討を行った結果でしょう。
あとは、強固な論理力で話を構築していけばいい。
すごい。

こういう論理力を持った人物はもういませんね。

残念ながら、ゴルゴ13のような人物も現実にはおらず、
危機は回避できなかった。

今必要なのは、センチメンタリストでもイデアリストでもない。
徹底的なリアリストです。
私はそれになりたいと思う。





1967年

SF界ニュー・ウェーブの旗手は三人いる。
エリスン、ディレイニー、そしてゼラズニイ。

このB級感たっぷりのタイトルからは思いもよらないでしょうが、
かなりの傑作です。
文体はまるでカポーティのよう。

連勤中のため休みなく働く私を慰めた本。
睡眠不足と疲労からくる激しい頭痛を和らげた本です。
面白すぎて、睡眠時間をけずってしまった。


放射能に汚染されきったアメリカ大陸を、
ペストの血清を届けるために、
ロスからボストンへ、陸路を突っ走る話。
ドライバーは元暴走族リーダーの凄腕。
緊急事態なので腕を買われ、特赦でムショから出てきた。
人が全く住むことのできない内陸部、
通称「呪いの横丁」を彼は走り抜き、
ペストで全滅の危機に瀕するボストンを救えるのかー


デスペラードの哲学とアンチヒーローの物語。
少し突拍子もない想像があるけれどそれは愛嬌。
圧倒的筆致とスピード感。

ゼラズニイの本領発揮。


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海馬浬弧
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自己紹介:
言語学者、哲学者、文学者、サイバネティック学者である、
海馬浬弧による本、映画、アニメ、音楽、その他、
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私生活については一切書きません。7カ国語堪能。
独断と偏見に充ち満ちているため、不快に思われる方もいらっしゃるでしょうが、これも現代の歪みの一つだと思って、
どうかお許し下さいませ。
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