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あらゆる事柄に関するレビューログ。 #kaibaricot
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安部公房は私が最も好きな作家であり、
最も影響を受けた作家でもあります。

思えば、高校時代に『赤い繭』に出会ったことがきっかけで、
安部公房を読みあさり、新潮文庫版はすべて揃えました。
私が文学に入っていくきっかけは、安部公房であったと断言できます。

本作も、すでに4回は読んだと思います。
しかし、内容の多くを忘れてしまったため、図書館で借りてきました。
私は、前に一度読んだ本については図書館で借りるようにしています。


さて、『密会』
『砂の女』ほどのスリリングさはありませんが、
第一に思ったのは、
今になってもアクチュアリティーを全く失っていないということ。
というか今こそ必要な本であるということ。
第二に、安部公房のテーマは、
ある程度同じテーマを常に追求しているということ。

ランダムに挙げてみると、
『砂の女』、『箱男』、『燃えつきた地図』、
『他人の顔』、『壁』など。
どれも似ているのですね。
もちろん、似ているけれど作品内の重心がそれぞれ違う。

よく同年代の三島と対比されるけれども、
安部公房と三島由紀夫は全く違う巨匠ですね。
河出から出ている、二人の対談などは、
たぶん10回以上は読んだ。
ある意味ライバル関係にあった二人。
安部公房、三島由紀夫は特に好きなのです。

三島が絢爛豪華な文体であるとすれば、
安部公房は素朴で、とても現代的な文体です。
(大江健三郎とか倉橋由美子のような
実存主義的な文体でもない)

作中人物が書いているノートを読む、
という形式も少なくなく、
そのせいか、ありふれているような印象の、
特徴のない文体であり、
三島なんかと比べて格段に読み易いのだけど、
この読み易さこそがくせ者で、
現代人の孤独とか乾いた日常が、
実は全き絶望に裏打ちされているのが、
文体から透けて見えてくるのです。

ほんとうに、この絶望はどこからくるんでしょう。
太宰治のような感傷主義の頂点を時には撫でながらも、
その文体は融通無碍。
三島のような素晴らしい殺し文章もあります。

安部公房はいつも、
明らかに名もない「一般人」を主人公としている。
実際、名前もない主人公が多い。
名前を無くしたり、顔を無くしたりもする。
三島は必ず、徹底的な主人公の設定があるのにもかかわらず。

三島と安部は本当に正反対な点が非常に多いと感じます。
それでいて、二人の仲は不思議な感じで。
そういう「仲」的な部分はファンからするとたまらないですよね。

『密会』はその名の通り、
「密会」に重心が置かれているけれど、
性の問題を巡って「病院」に迷い込んだ人々の、
絶望的な愛の探求がテーマとなっている。

ラストシーンが凄まじく詩的。
そのシーンに至るまでの逃亡も、なんだろう、
なんか表現悪いですが、
出来の良いライトノベルを読んでいるようなスピード感があり、
第一級の純文学なのに、
優れた漫画を読んでいるような、ドキドキ感もあり、
のめり込んでしまう。

平岡篤頼先生が書かれているように、
『箱男』は覗きの話で『密会』は盗聴の話。
箱男はホームレスで視覚の話なら、
密会は病院で聴覚の話。

「娘の頭を支えている手首のあたりに、雫がしたたった。
涙か、涎かは、分からない。」

この文章は頗る美しいです。
感動的です。想像力に直に訴えかける。
こういう文章も、文字通り独白的な文章の中に、
安部さんは鏤めている。
これこそ観照的文章です。

この機会に、一気に読み直そうと思っています。




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海馬浬弧
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言語学者、哲学者、文学者、サイバネティック学者である、
海馬浬弧による本、映画、アニメ、音楽、その他、
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独断と偏見に充ち満ちているため、不快に思われる方もいらっしゃるでしょうが、これも現代の歪みの一つだと思って、
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