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あらゆる事柄に関するレビューログ。 #kaibaricot
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『箱男』再読。

『密会』は聴覚的アプローチから、愛を捜索する物語り。
それに対し、『箱男』は視覚的アプローチから、愛を探求する。

この二作品を読んでまず感じるのは、
盗聴にしろ、覗きにしろ、最終的には必ず性愛に行き着き、
逆に性愛には盗聴的要素、覗き的要素が多分にあるということ。

思えば、覗き的要素が「恋」のきっかけになる物語は、
古今東西を見渡しても非常に多い。
例えば、映画『裏窓』は覗き映画の代表作である。
『デカローグ』のどのエピソードか忘れたけど、
二作くらいは覗き的要素があった。
『マレーナ』もそう。
おそらく、すべての恋愛映画には、
「見る」というテーマが重要なものとして織り込まれているでしょう。

覗きとは、見られずに見ることです。
純粋に見る側に回ることです。
そして、性愛も含めコミュニケーションとは、
見る見られるという行為なのです。

箱男になることとはどういうことか。
それは、自分は見られることを遮断し、
一方的に見る側に回るということ。

象徴的なのは、一方的に見る側となった箱男が
世界がどのように見えるかを語る描写。
そにれよると、世界が突如、
とても滑らかで、敵意を失い、安全に見えるという。
実は、私たちは、人間からだけでなく、
様々な物象からも見返されている、ということがわかる。
私たちは通常、見られていることを意識し、
自意識を作り上げ、自己防衛する。
なんとなく、物象から見返されているというのは
書かれていないけれど、アントニオーニの
『太陽はひとりぼっち』の終盤のシークエンスにも暗示されている。


他者からのコミュニケーションを完全に遮断する箱男。
だから、箱男から見られていることを感じたとき、
一方的に見られている人は、恐怖と怒りと憎しみを持って、
見られずに見ている特権的な立場の箱男に襲いかかるのだ。
これはある意味では黒澤明の『天国と地獄』の
山崎努の心境でもあるでしょう。

とてもよく練られた前衛的な物語。


このような小説を読み、つくづく最近感じるのは、
人間は一人では「遠くへいけない」ということ。
自分一人の興味や考えることなど、所詮知れている。
自分一人の興味を追求しても、とても自己満足的な
偏った人間となってしまいがちで、そういう実例をよく見る。

自分が好きなことややりたいことなど、
それまでのことに過ぎない。
自分が興味なくて、場合によっては否定していることにこそ、
何かヒントが隠れていることが多々あり、視野が広がっていく。
なぜなら、自分が嫌っていることとは、
自分にとって脅威なことに他ならないから。
そういう体験を私自身は積み重ねている気がする。
羽生さんがあえて相手の得意な形に挑むのと同じです。
三回負けても四回勝てばいい。

自分を否定し、傷つける他者にこそ、新しさはある。
なぜなら、自分にとって自分は安全地帯に過ぎないから。
自分一人で考えられることなんて所詮しれている。
バイアスががっているし。
だから出来るだけたくさんの人と、私は腹を割って話したい。


安部公房は、
弁証法的に高まる二人の関係を示すのではない。
「尊敬しあう関係」なんて馬鹿らしい。
『密会』にしろ『箱男』にしろ、
出来するのは絶望的な愛。

問題となるのは、どちらも結局は性愛であり、
人間二人の関係は、つまるところそこへ行き着くと
私自身はそう考える。

『箱男』の終盤の異様なスピード感は一体何なのか。
誰か教えて下さい。

例によって、主人公に名前もない物語。
それは、彼が常に三島的英雄の物語を書かないからで、
これはあくまで群衆の一人、誰にでも起こりうる寓話なのです。

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海馬浬弧
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自己紹介:
言語学者、哲学者、文学者、サイバネティック学者である、
海馬浬弧による本、映画、アニメ、音楽、その他、
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私生活については一切書きません。7カ国語堪能。
独断と偏見に充ち満ちているため、不快に思われる方もいらっしゃるでしょうが、これも現代の歪みの一つだと思って、
どうかお許し下さいませ。
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