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あらゆる事柄に関するレビューログ。 #kaibaricot
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2010年10月の刊行以来、
フランス国内で大ベストセラー。

発売以来、ずっと"non-fiction"部門でトップをひた走り、
4月号の『ふらんす』でもやっぱりトップになっていた。
(5月号はまだ見ていませんが・・・)
たしか100万部は売れている本です。
3ユーロぽっちの、小冊子。
作者のステファン・エッセルは日本人には全くもって馴染みのない方ですが、
93歳のおじいちゃんで、レジスタンスの闘志だった人です。

以下、この本については、少し真面目に書きます。


2007年にサルコジが大統領になって以来、
フランスが辿ってきた道が、フランスらしからぬ道だったのは事実。
まさしく憂国の徒とも言うべき、老エッセルが、
自国の人々に対し、「怒りなさい!」と説いた一冊。
(ただし、Indignez-vous !というフランス語は、
怒りなさい、というのとは微妙に違うのですが……
ぎこちない言い方で申し訳ありませんが、
直訳すると、義憤を感じなさい、ということになる)
このエッセルの言葉は身につまされるものがある。


個人的な話をすると、2007年の大統領選挙の際、
ちょうどパリに住んでいたので、あの狂熱はいまも記憶に新しい。
皆が、ロワイヤルとサルコジのテレビ討論を見て、
翌日はそのことについて話合い、毎日のようにデモが起こっていました。

それから遡ること2003年3月20日。
イラク戦争勃発時も、フランスの地方にいました。
当時、首相であったドビルパンは国連で反対演説を行って、
その演説は非常に感動的でした。
(フランスは首相、大統領の両方がいる政治体制です)

日本をはじめとする欧米諸国はイラク戦争に当然のように賛成する中、
反対を表明するフランス。
アメリカ嫌いのフランス。
あーこれがフランスの流儀なのかな、と漠然と思いました。

ところが、アメリカ大好きサルコジが大統領になって以来、
らしさを失っていきました。
2008年〜2009年頃は教育改革問題のせいで、
大学はかなり大きな混乱を引き起こす。
さらに2010年は年金改革問題。

そのうえ、サルコジは悪名高きガダフィ大佐を国賓として招待。
握手までする始末。
さらに、つい先だって更迭されるに至った"MAM"こと、
ミシェル・アリヨ=マリーは、冬にベン・アリの自家用ジェットで、
ジャスミン革命の最中にヴァカンスをとるというお粗末外交。
まるで日本の政治家のようなお粗末さ。

日本の政治家よろしく、それぞれが自分の利権のことしか考えず、
四六時中馬鹿げた議論の交わされる政治に憤り、
レジスタンスの闘志であったエッセルは筆をとった、
といったところでしょう。

…………………

扉頁には、クレーの『新しい天使』という絵が載っています。
この、現在はエルサレムにある絵は、
もともとはベンヤミンが所有していた絵です。
ナチから逃れる際も彼が大切に持って逃げた絵。

この絵が指し示すこと、それがエッセルのライトモチーフ。
すなわち、「我々が「進歩」と呼ぶこの嵐を抑えている天使」、です。

正直、この本の内容はというと、それほど新しいことはない。
まず、エッセルは戦時中のレジスタンスの論理について語る。
民主主義の基礎について、その台座について、
ざっくり語る。(詳しく論を進めているわけではない)

Le motif de la résistance, c'est l'indignation.

そして、1948年の世界人権宣言の起草に関わった際の話、
アルジェリア戦争、サルトルとの交流、
例によってアンガジュマン的な話を展開。
そして「最も危険な態度は無関心である」と。
ジュネなども関わった、
パレスチナに対するエッセルの態度表明。
ラストは非暴力的蜂起について語る。

このような論旨は全く新しいものではない。
それどころか、私には、このような論理の展開というのは、
そもそも多くのフランス人の頭に自ずから入っていると、
思っていました。
だから日本では考えられない、
高校生達の大規模デモが起きたりするのかと。

しかし、こういういかにもフランス的精神を、
エッセルがあえて声高に叫ばないといけない状況というのは、
この本がバカ売れしていることを鑑みると、逆説的に、
フランス・アイデンティティがまさしく危機に瀕していることを、
証明しているに違いないと私は考えます。

はっきり言って、
この本に書かれていることは既知過ぎるのです。

最近ちらっと読んだ、
フランスのテレビ局F2で長年キャスターを勤めていた人の弟の本に、
こういうことが書かれていた。

グーグルもヤフーもアマゾンもツイッターも、
ユーチューブもユーストリームも、
作ったのは全部アメリカ。
第三世界(PCの中の世界)はアメリカに支配されている。
フランスはもう美術館としてしか意味がないんじゃないか、と。
確かにそう。

らしさを失って、らしさを声高に説明しないといけない状況というのは、
残念ながら末期症状の一つです。


『怒りなさい!』
この言葉は、日本で今生きている私たちにも、
たとえ何も前情報がなくとも、何か訴えかけてくる表現です。

興味があれば、ぜひ読んでみてください。


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海馬浬弧
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言語学者、哲学者、文学者、サイバネティック学者である、
海馬浬弧による本、映画、アニメ、音楽、その他、
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独断と偏見に充ち満ちているため、不快に思われる方もいらっしゃるでしょうが、これも現代の歪みの一つだと思って、
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