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あらゆる事柄に関するレビューログ。 #kaibaricot
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2008年刊。講談社現代新書。

もし、あなたが働いている職場が、「不機嫌な職場」であるのなら、
ぜひ一読されることをお勧めします。
また、とりわけ上に立つ役職の方々や経営者の方々にとって、
とても参考になる本なので、読んで損はない本です。
企業で働いたことのない方や、学生の方にも
ぜひ一度就活の時などに読んでみたらいいと思う本です。

ただ、この本を手に取ったとしたら、
少なからずこのような経験がおありだからこそ、
必然的にこの本に興味を持つのかな、とも感じます。


今日本で(私は外国で働いたことがないので)、
どうしてこのような職場が増加していっているのか。
きっと個人個人は根っからの悪なんていないのに、
どうしてみんなの悪い部分しか出てこない職場となってしまうのか。
例えば自分の恋人に見せる姿を、
職場でも発揮できたら、
どんなにか明るい思いやりに満ちた職場となることでしょう。

この本に出てくる良き職場の例とは、そういう意味で、
例外なく、公私が適確に混じり合った職場に他なりません。
恋人や友人と付き合う際に見せる自分を出すことの出来る職場です。
ゲゼルシャフトでありかつゲマインシャフトである職場です。

しかし、現代を生きる人々の多くは、
仕事と私生活を分けて生きたいと願っているに違いないく、
その考えは根強い。
なぜなら、仮に自身が思う自分になれる仕事に就けるのであれば、
公私混同は至極幸せに達成されることでしょうが、
世のほとんどの人が、思うような職に就けず、
自分自身にすらなることができないからです。
畢竟、仕事の時間と私生活の時間の乖離を、自分から進めてしまう。

こういった問題に関して議論することはいくらでもあります。
それに、各職場において問題はいつも違うし、
関わっている人々特有の性格などもあり、
問題はもちろん一筋縄ではいきません。


私はただできるだけ、自分自身をこうしたいと願う。
すなわち、どこへ行っても、どういう時でも、
出来る限り相手のことを考え、思いやり、優しく振る舞いたい。
笑える引用で申し訳ありませんが、ある歌から。
「優しさに触れることよりをふりまくことで、
ずうっとずうっと今までやってきた。
それでも損したなんて思ってない」


自分のダメさ加減が目につくばかりです。
もっと徹底的な自己否定をしないといけない。

努力しかない。


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私が慢性的な睡眠不足の理由の一つ。
仕事後見る、深夜の予約録画。
中でも語学番組のやまには手を焼きます。

以下、この春からのNHK語学番組の寸評。
ロシア語や中国語は今回はあきらめました。
ロシア語はキリル文字を少し覚えるだけで精一杯。
中国語は少し使えるので、また今度。


アラビア語会話。
日本人は宍戸開。
個人的にはサヘル・ローズさんにやってほしかったけれど、
昔やったことあるのかな。
かの渡辺陽一さんがひげをたくわえる理由は、アラビア圏に、
入っていき易いから、だとか。

それはそれとして。

アラビア語の厄介な点、それはひとえに「文字」につきます。
何度見ても、書き方がよくわからない。
覚えられない。
それに対して文法は対して難しくない。
フランス語やイタリア語と似ているし、
殊にスペイン語とは、歴史的な背景もあって発音もよく似ている。
要するに、名詞には性数があって、主語によって動詞が活用する形式。
また、主語の性にも動詞の活用は左右される。
スペイン語やイタリア語と同じく、主語を省略する形式が多い。など。

正直、書き方のコーナーが一番厄介で、
何度書いてもうまく書けたためしがない。



今期のスペイン語は最高です!一番あたりですね。
翼君もいいけれど、日本人の角田先生、通称カルロスが面白すぎる。
サマランカへコロンビア人の女の子が留学してくるシチュエーションも好き。

スペイン語は話者が4億人以上もいる言語で、フランス語より多い。
非常に重要な言語。
ノーベル文学賞にこないだ、リョサを輩出したし、
もちろんマルケスやボルヘスもいる。
スペイン語はできるにこしたことない。

今期は、しっかりと、面白く学べる作りがとてもいいと思います。


ドイツ語は、前期がペラペラのLIZAちゃんだったので、
少し親しみやすくなった感じがあります。
内田恭子さんは英語が使えるから、ドイツ語の習得も早い。

しかし、いつも思うのだけど、
私からすると、ドイツ語が一番難しい。
スペイン、フランス、イタリア、どれとも似ていないんですね。
ドイツはゲルマン系の言語なので、フィンランド語とか、
ポーランド語とか、そっちのほうに近い。
あの格変化ほど厄介なものはない。
動詞はフランス語などからの類推を全く許さない。
単語も似ていないし。

余談ですが、韓流のチャン・グンソクさんは、
私の大好きなドイツのバンド、TOKIO HOTELのボーカル、
ビルの影響が濃い。
ただ、これに気がついたのは、私ではない。



ハングル。
しっかり学べますよ、今回のも。
やっぱりハングルって日本人からは入りやすい。
蓮池さんの本にも書いてあることですが、
語順が同じなのは相当強みだし、日本語と非常によく似ている。
韓国について日本人はもっと知るべきです。

あのハングル文字も、とても便利な科学的な文字です。
アラビア文字の晦渋さには頭を抱えますが、
ハングルは明快です。
マジでやれば、結構すぐに使えるようになってきます。
おすすめです。


今回、一番作りが適当なのがイタリア語。
語学番組の体裁を保ちつつ、ざっくりした文化紹介番組化している。

ご覧の通り、出演者の数も少ない。
イタリア語ははっきり言ってスペイン語とそっくりです。
イタリア語話者はスペイン語を習わなくてもかなり解するし、
逆もまた真。
動詞の活用とかほぼいっしょだし。

まあ、でもこの適当感がイタリアっぽくて、私は好きです。




最後はフランス語。
前回はわりと話せる知花くららさんだったのが、
今回は黒谷さんへ変更。
そして講師陣も、ジャニック・マーニュ先生復活。
もう何年も前、東西線でジャニックさんに会って、
手をふってもらったことがある。

私は、知花さんの時よりは、今回の方が好きです。
あまり文学の話とか出てこないほうがいい。



・・・と、こんな感じです。
英語でしゃべらないと、とかは割愛しました。

市場は日本だけではないし、日本で縮こまってたら、
全然駄目だと思うので、文化を知るという意味でも、
この辺の番組は必見です。

それぞれの言語、それ自体に、考え方まで染みこんでいます。

ジョゼ・モウリーニョが通訳から成り上がり、
何カ国語も自分で話すのは、通訳を通して生じる誤解を嫌うからです。
言いたいことは、自分で直に話す。

バンブニストの言う、

言語内翻訳(同じ言語間におけるパラフレーズ)
言語間翻訳(ある言語から別の言語におきかえること)

これらをつきつめて、
意思疎通と洞察力と自己主張を磨くためにいかがでしょうか。




1973年

極端な寡作監督、スペインが生んだ巨匠、エリセ。
記念すべき長編第一作は、とても不思議な映画であった。
スペイン語の原題は「ささやき」というよりむしろ「精神」
spirit, esprit, etc...

非常に有名な映画ですので、どこかでこの特異なタイトルを、
きっと耳にされたことがあるのではないでしょうか。

人間をミツバチに見立て、個々の心模様を、
細やかにたどる、冷静なカメラ・アイ。

時は1940年スペイン。
内戦が終了し、フランコ独裁政権誕生。
とてもとても静謐な映画です。
象徴的な映画と言われますが、
何を象徴しているのかわからなくても十分楽しめるでしょう。
私はスペインの歴史を詳しく把握していませんが、
それでも何かしらの抑圧的な雰囲気は感じることができる。

ブニュエルの空前の傑作『ビリディアナ』もスペイン。
不思議な国。


こんな静かな映画を作ることができるとは。
溝口健二の『山椒大夫』を見て、監督を志した、
というエリセのエピソードもう頷けます。

ある人に倣い、引用でしめくくりましょう。

すなわちマルロー曰く、
「静謐は悲劇よりもなお悲痛である」

この映画にふさわしい。



書家であり、文字に関する多数の貴重な著作を上梓されている、
石川九楊氏。
『文字の現在、書の現在』では、
いまでは、当たり前となっている「明朝体」とはいかなる書体(フォント)
であるのか、「ゴシック体」とはいかなる書体であるのか、
さらには「丸字」「肉筆」、「書く」からキーボードを「打つ」、
など文字にまつわる様々な事象を考察した、大変面白い論考です。
現代のようにPCや携帯が当たり前となっていない80年代後半に、
すでにこのような考察をされていたというのは、
慧眼としか言いようがありません。
非常に面白い論考です。

さて、その中でも今回私が取り上げたいのは、
円谷幸吉が自殺した際に遺した遺書について、
肉筆と明朝体を論じた項目です。

28歳という若さで、自殺したマラソンランナー円谷。
円谷については詳しく書きませんが、
その遺書が新聞に掲載されたのを野坂昭如が読んだ際、
「何というすさまじい呪いであるかと、受けとった」
(『円谷の実、三島の虚』より。)
と野坂氏は書いているそうな。

さてこの遺書、何が書かれているのかというと、
ひたすら、ずらりと親族、そしてお世話になった方へお礼であり、
美味しかったものに対する感謝なのです。
「〜様ありがとうございました」「〜様済みません」
「〜美味しうございました」
ひたすらこの繰り返し。

石川氏は、肉筆の際はそれほど感じられないものが、
明朝体として印字されると、
途端にその言葉が背負っている第三の「意味」が露出する事実を、
野坂の言葉から説明されています。

しかしながら、この繰り返し、羅列は、
肉筆でも恐るべきものです。
興味深いのは、本来の「美味しうございました」や
「ありがとうございました」は良い意味なのに、
ただただ反復されることで、全く逆の意味を帯びていくということです。

私は石川氏と違い、
明朝体が本人も意識していない?
(この点も議論の余地ありですが)怨み、
呪いを暴いたのではないような気がする。
つまり書体の問題というよりも、
これはレトリックの問題のような気がしてならない。
もちろん書体の問題も関わっていますが。

なんにせよ反復という行為は重ねられれば重ねられるほど、
病的な匂いを発散させ出す。


遺書というものについて、ずっと考えていたので、
この点ひっかかりました。

凄く貴重な文字に対する論集、
素人からその作品見ると「前衛」書家の石川九楊氏。

ぜひ。

2010年10月の刊行以来、
フランス国内で大ベストセラー。

発売以来、ずっと"non-fiction"部門でトップをひた走り、
4月号の『ふらんす』でもやっぱりトップになっていた。
(5月号はまだ見ていませんが・・・)
たしか100万部は売れている本です。
3ユーロぽっちの、小冊子。
作者のステファン・エッセルは日本人には全くもって馴染みのない方ですが、
93歳のおじいちゃんで、レジスタンスの闘志だった人です。

以下、この本については、少し真面目に書きます。


2007年にサルコジが大統領になって以来、
フランスが辿ってきた道が、フランスらしからぬ道だったのは事実。
まさしく憂国の徒とも言うべき、老エッセルが、
自国の人々に対し、「怒りなさい!」と説いた一冊。
(ただし、Indignez-vous !というフランス語は、
怒りなさい、というのとは微妙に違うのですが……
ぎこちない言い方で申し訳ありませんが、
直訳すると、義憤を感じなさい、ということになる)
このエッセルの言葉は身につまされるものがある。


個人的な話をすると、2007年の大統領選挙の際、
ちょうどパリに住んでいたので、あの狂熱はいまも記憶に新しい。
皆が、ロワイヤルとサルコジのテレビ討論を見て、
翌日はそのことについて話合い、毎日のようにデモが起こっていました。

それから遡ること2003年3月20日。
イラク戦争勃発時も、フランスの地方にいました。
当時、首相であったドビルパンは国連で反対演説を行って、
その演説は非常に感動的でした。
(フランスは首相、大統領の両方がいる政治体制です)

日本をはじめとする欧米諸国はイラク戦争に当然のように賛成する中、
反対を表明するフランス。
アメリカ嫌いのフランス。
あーこれがフランスの流儀なのかな、と漠然と思いました。

ところが、アメリカ大好きサルコジが大統領になって以来、
らしさを失っていきました。
2008年〜2009年頃は教育改革問題のせいで、
大学はかなり大きな混乱を引き起こす。
さらに2010年は年金改革問題。

そのうえ、サルコジは悪名高きガダフィ大佐を国賓として招待。
握手までする始末。
さらに、つい先だって更迭されるに至った"MAM"こと、
ミシェル・アリヨ=マリーは、冬にベン・アリの自家用ジェットで、
ジャスミン革命の最中にヴァカンスをとるというお粗末外交。
まるで日本の政治家のようなお粗末さ。

日本の政治家よろしく、それぞれが自分の利権のことしか考えず、
四六時中馬鹿げた議論の交わされる政治に憤り、
レジスタンスの闘志であったエッセルは筆をとった、
といったところでしょう。

…………………

扉頁には、クレーの『新しい天使』という絵が載っています。
この、現在はエルサレムにある絵は、
もともとはベンヤミンが所有していた絵です。
ナチから逃れる際も彼が大切に持って逃げた絵。

この絵が指し示すこと、それがエッセルのライトモチーフ。
すなわち、「我々が「進歩」と呼ぶこの嵐を抑えている天使」、です。

正直、この本の内容はというと、それほど新しいことはない。
まず、エッセルは戦時中のレジスタンスの論理について語る。
民主主義の基礎について、その台座について、
ざっくり語る。(詳しく論を進めているわけではない)

Le motif de la résistance, c'est l'indignation.

そして、1948年の世界人権宣言の起草に関わった際の話、
アルジェリア戦争、サルトルとの交流、
例によってアンガジュマン的な話を展開。
そして「最も危険な態度は無関心である」と。
ジュネなども関わった、
パレスチナに対するエッセルの態度表明。
ラストは非暴力的蜂起について語る。

このような論旨は全く新しいものではない。
それどころか、私には、このような論理の展開というのは、
そもそも多くのフランス人の頭に自ずから入っていると、
思っていました。
だから日本では考えられない、
高校生達の大規模デモが起きたりするのかと。

しかし、こういういかにもフランス的精神を、
エッセルがあえて声高に叫ばないといけない状況というのは、
この本がバカ売れしていることを鑑みると、逆説的に、
フランス・アイデンティティがまさしく危機に瀕していることを、
証明しているに違いないと私は考えます。

はっきり言って、
この本に書かれていることは既知過ぎるのです。

最近ちらっと読んだ、
フランスのテレビ局F2で長年キャスターを勤めていた人の弟の本に、
こういうことが書かれていた。

グーグルもヤフーもアマゾンもツイッターも、
ユーチューブもユーストリームも、
作ったのは全部アメリカ。
第三世界(PCの中の世界)はアメリカに支配されている。
フランスはもう美術館としてしか意味がないんじゃないか、と。
確かにそう。

らしさを失って、らしさを声高に説明しないといけない状況というのは、
残念ながら末期症状の一つです。


『怒りなさい!』
この言葉は、日本で今生きている私たちにも、
たとえ何も前情報がなくとも、何か訴えかけてくる表現です。

興味があれば、ぜひ読んでみてください。


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海馬浬弧
性別:
女性
自己紹介:
言語学者、哲学者、文学者、サイバネティック学者である、
海馬浬弧による本、映画、アニメ、音楽、その他、
あらゆることに関するレビューログ。
私生活については一切書きません。7カ国語堪能。
独断と偏見に充ち満ちているため、不快に思われる方もいらっしゃるでしょうが、これも現代の歪みの一つだと思って、
どうかお許し下さいませ。
リンクは才能豊かな知人の方々なので、ぜひ。
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