あらゆる事柄に関するレビューログ。
#kaibaricot
昨年8月、当時、耳かき店員であった江尻さん、
それに江尻さんのお祖母さんもとばっちりを食い殺害されるという、
悲惨きわまりない事件。
裁判員裁判としてははじめて、死刑を求刑された裁判となり、
先日、判決が下され、林被告には無期懲役が言い渡されました。
その際に問題になったのが、有名な永山則夫事件です。
新藤兼人監督の映画『裸の十九歳』や、
上記の獄中記『無知の涙』で一躍時の人となり、
1983年に死刑を言い渡され、執行された人物。
永山則夫さんのことはひとまず今回は置いておいて、
(『裸の十九歳』『無知の涙』は名作です)
永山則夫事件をきっかけに、死刑判決の一つの基準として
「永山基準」という基準が設けられるようになりました。
今回の、江尻さんと江尻さんのお祖母さん殺害事件に関しても、
まずこの「永山基準」が参照されました。
すなわち、死刑判決を下すにあたって、重要な要素に、
何人殺害したか、ということが重要視される、という基準です。
「永山基準」には他にも基準がありますが、まず数が重要ということ。
先進国の中でも死刑が残っているのは日本とアメリカだけとよく言われますが、
裁判員裁判で死刑というのは、裁判員にとってあまりにも重すぎる。
よく死刑は犯罪抑止と言いますが、実は全く関係ないことが、
かなり多くの統計や研究で証明されているからこそ、
多くの先進国で死刑制度は撤廃されています。
死刑という問題は実に困難な問題です。
被害者の方々の心情を考えると軽々しいことは何も言えない。
そこで一言だけ。
たとえ、私たちが様々な凶悪事件の加害者でなくても、
死刑制度がある限り、私たちも人殺しです。
私たちも日本人である限り全員加害者です。
日本人には決定的に加害者意識が欠けていると私は思います。
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1971年、ルネ・クレマン『パリは霧にぬれて』
私の大好きな女優、フェイ・ダナウェイが出ています。
魅力的です。
それに対し、相手役はフランク・ランジェラ。
この変わったキャスティングはなんでしょうか。
フランク・ランジェラは最近まで、
ウーピー・ゴールドバーグと同棲していた、実力派俳優です。
本作の原題はLa maison sous les arbres
直訳すると、木々の下にある家。
それに対し、邦題は、全編ソフトフォーカスで撮られていることを理由に、
パリは霧にぬれて、となっています。
内容は2時間ドラマ。
特にメッセージ性や主張など、一切ありません。
野心的な作品でもなんでもない。
単なる2時間サスペンス。
なので、そんなに面白くないし、残る映画ではありません。
が、フェイ・ダナウェイは魅力的です。
彼女の代表作は、間違い無く『ボニー&クライド』ですが、
こういう適当な作品でも綺麗ですね。セクシーです。
ほんと、フェイ・ダナウェイはアメリカ人だなあとつくづく思います。
フェイ・ダナウェイだけでも見る価値あり。
ポーランドの黒衣の天使、ここに降臨。
ポーランド版ピアフと言ってもいいでしょう。
ブックレットは、ポーランド文学の権威ともいえる沼野充義氏です。
アンジェイ・ワイダも認める、ポーランドでは国民的歌手です。
さて、このCDには、
なんと、スペイン語、ドイツ語、フランス語、ロシア語、
もちろんポーランド語、など5カ国語の歌が、録音されています。
これほど多くの言葉で様々な感情を伝えるとは驚きです。
その頭脳にも脱帽します。
いずれの曲もライブだけあって、炎の情熱が滾っています。
特に、「トマシュ」は出色の出来映えで、ポーランドのひどく複雑で、
苦しい歴史を歌っているのか、あまりにも沈鬱です。
日本に、ポーランド語を学べるところは、今はもう東京外大しかありません。
辞書も、何年も前に出たものが1冊しかない。
なので、私も、他の言語の小さなポーランド語辞書で、
苦労して引いているような次第です。
特にやっかいなのは格変化で、7格あります。
スラブ語系ではチェコ語、スロヴァキア語に近く、
ロシア語にも似ているらしい。
閑話休題。
Ewa Demarczyk、もう廃盤なので、もし中古CD屋さんなどで見つけたら、
絶対に買い、です。
アンリ・ヴェルヌイユ監督。
原題はMélodie en sous-sol
この映画も3〜4度目でしょうか。
何度見ても面白い。
ルイ・マル監督の傑作フィルム・ノワール『死刑台のエレベーター』
と並ぶ名作です。
この映画はいくつかの点で『死刑台のエレベーター』に似ています。
まず、エレベーターが重要なものとして登場すること。
次にラストシーンの構造が似ていること。
(これから見る方もいらっしゃるかと思うので、
具体的に何が似ているとは書きません。)
そして、ジャズが非常に効果的に使われていること。
などです。
『死刑台のエレベーター』はモーリス・ロネ、ジャンヌ・モローですが、
『地下室のメロディー』はジャン・ギャバンにアラン・ドロン。
ジャン・ギャバンがやはりいい。
本当に偉大ですね、彼は。
彼の前ではドロンも小物です。若造です。駆け出しです。
なんか、歳とってからは小沢一郎に似てるし。
日本のヤクザ映画よろしく、出だしは、
ギャバンがシャバに出てくるところです。
そして物語は始まるのですが、ギャバンのモノローグが、
なんとも言えず、苦虫を百匹くらい噛みつぶした感じで、渋いんですね。
そして、アラン・ドロンと組んで、
最後の大仕事にカンヌで取りかかる。
有名なラストシーンですが、何度見ても素晴らしい。
ギャバンも、ドロンも、もの凄くやりきれない表情をする。
本当に、ゾクゾクしますね。
最後の緊張感。
あのシーンを見るとテンションが上がります。
もう、なすすべなし、ってこんな表情なんですね。
これぞ本当の、万事休す、ギャバンとドロンの掛け合いがたまらない、
フィルム・ノワール。
フィルム・ノワール研究家の私としましてもおすすめです。
2009年刊。砂子屋書房。
2010年、日本詩人クラブ新人賞受賞。
すべて、ありのままに述べさせて頂きます。
それがこのレビューログの意義ですので。
近年稀にみる、すばらしい詩集です。
最近の詩は、何を書いているのか、何が言いたいのか、
単なる言葉遊びのような、空虚な詩ばかり(芝刈り)の中、
倉本さんの詩は、明らかに、優れています。
この詩集と出会ったきっかけは、ブックオフでした。
100円のコーナーに紛れていました。
新刊ですし、どうやら初めは半額の1250円という値札がつけられていたらしく、
裏表紙には無造作に貼られた100円と1250円の値札。
読まれた形跡の全くない本。
私は、全く聞いたことのない、この詩人の名前を見、
装丁にも少し惹かれ、なんとなく本を開いてみたのでした。
金曜の夜遅く。
すると、中に挟まっていたのは、倉本さん直筆の「謹呈」
つまり、この本の前の所有者は、きっと、倉本さんご本人から、
この本を貰ったのでしょう。
ちゃんと読みもせず。
そんな風に思いながら、なんとはなしに読んで見た詩、
「氷結」「畳の目」
非常にいい詩でした。
以下、上から目線のように、レビューを書いてしまうことを、
どうかご容赦下さい。
詩集の名前の通り、いずれの詩も、
東京の真夜中に、孤独の中、何かを試みようと書いていたんだろうなあ、
と強く思い起こさせる叙情があります。
「東京の」というのは、少なくとも私にとっては重要なことです。
なぜなら、東京の真夜中は、地方の真夜中と違い、特別だからです。
何かを目指す者にとって、東京という場所は、日本の中で最も重要な場所です。
はっきり言って、それがスタート地点だとも言えるくらいで、
そこにいなければ、モンパルナスにいない画家が、
いくら実力があっても相対的には知られなかったように、
意味がないことなのです。
日本で戦うには、東京しかないのです。
東京の夜が、多くのこういう想いを隠していることを、
彼女は物語ってくれます。
ある時は官能的に、そしてある時は厳しく。
まさに、真夜中のパルス。
そして、言葉の選択が非常に論理的なのです。
昨今、なんとなく雰囲気にまかせて詩を書く人が多いですが、
倉本さんの詩は、必然性があります。
だから一遍の詩には、「断定」のような強さもあるのです。
これは、傑作詩集です。
あとから知ったことですが、この詩集が新人賞に選ばれるのは、
当然でしょう。
何かを志す者であれば、ひどく心に響くものがあります。
倉本さんがこれらの詩を、日常生活に追われながらも、
家に帰って、皆が寝静まった真夜中、静寂のなかに書いていた姿が、
すごく思い浮かびます。
なぜならそれは私自身の姿でもあるからです。
これは決して感傷ではなく、意志です。
謹呈本にも関わらず、ブックオフに売ってしまった、
どこかの誰かに、感謝したいと思います。
アマゾンや版元である砂子屋書房サイトで購入可能。
本当にお勧めの詩集です。
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言語学者、哲学者、文学者、サイバネティック学者である、
海馬浬弧による本、映画、アニメ、音楽、その他、
あらゆることに関するレビューログ。
私生活については一切書きません。7カ国語堪能。
独断と偏見に充ち満ちているため、不快に思われる方もいらっしゃるでしょうが、これも現代の歪みの一つだと思って、
どうかお許し下さいませ。
リンクは才能豊かな知人の方々なので、ぜひ。
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