あらゆる事柄に関するレビューログ。
#kaibaricot
ハヤカワ文庫。
この本について、いかなることを語ればよいでしょうか。
実は、伊藤計劃氏の作品について、
まず私自身にとって重要な論考を、あるところへ寄稿する予定なので、
ここで詳細を語るわけにはいきませんが、
伊藤計劃氏は、ゼロ年代最高の小説家と確信しました。
それだけに、2009年、34歳という若さでご逝去されてしまったことは、
本当に残念でなりません。
これほど素晴らしい小説家が存在していたとは。
以下、お好きな方がいらしたら、誠に申し訳ありませんが、
このレビューログは、「尊大でかつ傲慢であること」を設定としていますので、
少し酷く書きます。
先日の芥川賞を受賞された、お二方の小説と比べ、
なんと計劃氏の小説のほうが優れていることでしょう。
朝吹さんのは、代々と続く良きご家庭にて育まれた、
単なる処女の幻想に過ぎない。
西村さんのは、太宰とか田中英光とかの系譜を受け継いでいます。
(ご自身は相当、田中英光に詳しいとか)
要するに、日本センチメンタリスム同盟ですね。
いまだにこんなセンチメンタリスムをよしとする風潮が残っているとは、
と愕然としました。
そもそも、書くことの大半が、自分の経験に基づくなんて、
ほんとか嘘か知りませんが、そういうことを馬鹿みたいに言って、
すでに感傷的過ぎる。
内容もですが。
太宰は確かにいい。田中英光も悪くない。
でも、つまりは、もうこの道でやることはない、ということです。
太宰は、センチメンタリスムの頂点を文学で極めた。
だから、三島はそれが大嫌いだった。
アラーキーは凄い。
アラーキーは写真でセンチメンタリスムを極めた。
だから、写真でもこの道は、もうやる必要がない。
いつまでもセンチメンタリスムを追っかけると、
日本の文学は袋小路にはまり込む。
もっとひどいことを書きたいのですが、ここらへんで止めときます。
・・・・
それに対して、
伊藤計劃氏は全くセンチメンタルではない。
それどころか小説家として、
強靱な世界を創造する力をお持ちです。
あくまで論理的なリアリストです。
伊藤計劃氏とE氏に関する、論考を草している段階なので、
あまり詳しいことを言えずに、歯がゆいのですが、
『ハーモニー』絶対読むべきです。
SFというジャンルにカテゴライズされていますが、
いわゆるSFとは違う。
ユートピア小説の臨界点まで達した傑作。
日本人にこのような話が書けるとは……
第30回日本SF大賞受賞
「ベストSF2009」第1位
第40回星雲賞日本長編部門受賞
伊藤計劃さん、なんで死んじゃったんだろ……
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1996年の作品。フランス映画ですが、監督はポーランドの鬼才。
(鬼才とは使いふるされた言葉)
本国ポーランドでは大ヒットしたとか。
しかし、わけのわからない映画です。
一部にとても人気のある、カルトムービーのような感じ。
支離滅裂で、無茶苦茶な映画ともいえる。
アンジェイ・ズラヴスキーはワイダの助監督も務めた、
わりと有名な監督ですが、狂気を秘めた女性と、
そんな女性に翻弄される男を描くのがうまいらしい。
確かに、『ワルシャワの柔肌』に出てくる女性も、
かなりの狂気に取り憑かれている人です。
というか、まるっきり鳥居みゆき。
ジャンル的にはエロティックムービーにカテゴライズされていますが、
エロティックというより、意味不明。
かなりえぐい、ぐろいシーンもある。
たとえば、肉をミンチにする工場のシーン。
内容と絡めているんでしょうが。
内容がない、カルトムービー。
せめて、ポーランド語の映画にして欲しかった。
ワルシャワはほんと、暗く、汚い。
クシシュトフ・キシェロフスキ監督
第7話、8話については以前のログで書いております
今回はまとめ。
ついに全10話見終わりました。
すべてテレビ用に作られた、1話あたり60分程度の物語。
しかし、60分程度とはとても思えない質の高さ。
前にも書きましたが、ポーランドで最終回は64%を越える、
ポーランド史上最高視聴率をたたき出した傑作です。
このような作品がテレビで放映されるとは信じがたい。
内容的にも非常に濃厚でディープだし、
形式的にも、それぞれ『ふたりのベロニカ』なみの出来。
『ふたりのベロニカ』は話があまり好きではありませんが。
『デカローグ』
十戒に基づいた全10話。
はっきり言ってかなり面白いです。
ポーランドを代表する俳優たちの豪華キャスト。
各話、人間の深奥を抉る、重厚な物語。
舞台はたまたまポーランドなのですが、
日本でも通用する物語ばかり。
徹底的に暗い、苦しみの物語ばかり。
個人的には、
3話目、あるクリスマスに関する物語(主の日を心にとどめ、これを聖とせよ。)
6話目、ある愛に関する物語(姦淫してはならない。)
8話目、ある過去に関する物語(隣人に関して偽証してはならない。)
10話目、ある希望に関する物語(隣人の財産を欲してはならない。)
が好きです。
それにしても日本語のタイトルは少し曖昧です。
十戒はカトリック用語なので、たぶん日本で公開する際に、
よりとっつきやすく、こうしたのでしょうが。
異端の俳人、西川徹郎、10代の頃の処女句集。
吉本隆明をして、天才と言わせしめた、破調の銀河系。
神保町の、沖積舎さんは、いつも貴重な図書を小数部で発行しくれます。
たとえば、竹中郁詩集成。この重要な図書は限定350部ですが、
Nicot氏の蔵書にありますので、幸運なことに我が家に。
北川冬彦全詩集も沖積舎さんで、手に入れております。
さて、西川徹郎氏の『無灯艦隊』はまず、タイトルで、
物凄く引き付けられる。
とにかく、かっこいい。
艦隊とくると、どうしても不世出の詩人、
安西冬衛『軍艦茉莉』が頭をよぎります。
晦冥に包まれた海上を、音もなく迫り来る、艦隊ーー
若書きの観は多少否めないですが、
禁欲的で、鋭い句ばかり。ずば抜けています。
以下、ランダムに引用してみます。
(多作の俳人なので、10句ほど)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
世紀末的少年のふぐりは鼠です
海女の乳房に廃船の骨一本刺さり
冬の皿狐の顔を映しけり
屍姦の浜に黒い千鳥が湧き上がり
娼婦の項青い砂漠となっている
月食の街おんなはみんな生臭く
鬼火明かり全裸の祖母が走るかな
卵が降ってきそうな真昼峠越す
全身包帯の馬がくる分娩室に
椿咥えてしいんしいんと旅をしたり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一句一句、立ち止まってしまい、なかなか読み終わらない句集です。
ペリーヌ物語、全53話。
NHKでかつての世界名作劇場をやっているのですが、
その中でも最も長い『ペリーヌ物語』
今週ついに完結しました。
長かった、そして面白かった。
毎日録画予約していたのを、仕事から帰ってご飯を食べながら見る、
というのが楽しみでした。
『母を訪ねて三千里』、『足ながおじさん』、『小公女セーラ』、
『愛少女ポリアンナ』と見てきて、つくづく思うのは、
子供の頃見ていた時は、なにもわかってなかった、ということ。
そして、ポリアンナは少し違うけれど、
いずれも旅ものが多い。
そして、親がいないパターンも多い。
どれも、かなり面白い。
そして、本当に泣いてしまいました。
『ペリーヌ物語』も二回ほど泣いた気がします。
インドからフランスの架空都市マロクールまで、徒歩の過酷な旅。
『家なき子』(sans famille)の原作者、エクトール・マロの、
en familleを日本アニメに焼き直し、『ペリーヌ物語』に結実。
en familleとは直訳すると、「家族の中へ」
つまり、sans familleと対をなす作品。
架空都市マロクールとは、すなわち、フランス語でいうと、
マロの心。
ペリーヌの安寧の地は、作者である、マロの心の中というわけ。
アニメはボスニアから始まります。
母と、かなり人間的なポンコツ犬バロン、
そしてロバのパリカールとともに、フランスへ向けて旅をする。
彼女たちは旅の写真屋として生計をたてているのも、個人的には興味深い。
写真とは、本来こういうものであったということを痛感します。
このことは詳しく書く必要がありそうですが。
『母を訪ねて三千里』のラスト近く、ロバが死に、
マルコが倒れて、這いつくばってでも進む、物凄いシーンがあるのですが、
『ペリーヌ物語』もドナドナよろしく、ロバを売らないといけなくなる。
ここがまた悲しい。
そのうえ、パリの場末で母は死んでしまう。
いまわの際にペリーヌに語る言葉はとても悲しい。
「愛されるためには愛さないといけない」
この物語は、この言葉につきます。
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言語学者、哲学者、文学者、サイバネティック学者である、
海馬浬弧による本、映画、アニメ、音楽、その他、
あらゆることに関するレビューログ。
私生活については一切書きません。7カ国語堪能。
独断と偏見に充ち満ちているため、不快に思われる方もいらっしゃるでしょうが、これも現代の歪みの一つだと思って、
どうかお許し下さいませ。
リンクは才能豊かな知人の方々なので、ぜひ。
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