あらゆる事柄に関するレビューログ。
#kaibaricot
1972年。
コルトレーン・カルテットで名をはせ、
その後、ブルーノートと契約し、リーダー・アルバムをいくつか発表。
71年後半にマイルストーンに移籍し、レギュラー・カルテットを編成。
そして、本作である『サハラ』を制作。
コルトレーン・カルテットでも、素晴らしい演奏を披露していたマッコイ。
そもそも、あまりにもカリスマであり、
神格化されたコルトレーンと仕事していたので、
コルトレーンにばかりスポットはあたっていましたが、
マッコイも常に好演はしていました。
コルトレーンの深いスピリチュアルな探求を受け継いだのが、
本作である『サハラ』。
ジャケットでマッコイが持っているのは、日本の箏。
『サハラ』の中の、"Valley of life"は箏による怪演。
ジャズに箏を持ち込んで、まさかこれほど素晴らしい演奏になるとは。
もちろん、それだけではない。
標題作、Saharaもかっこいい。
必聴盤。
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1981年。キシェロフスキ。
この映画でついに、
DVD化されているキシェロフスキの映画をすべてみたことに。
ポーランド国内でしか公開されなかった短編映画や、
ドキュメンタリーなどの小品も少なくなく、見たいのはやまやまですが、
残念ながらこれが限界。
キューブリックも絶賛する、独特の世界観をもつ監督です。
『偶然』は初期作品で、『傷跡』や『アマチュア』に続く佳作。
後に、何人かの監督が取った手法である、
主人公である男性が、
1、「もしもワルシャワ行きの電車に乗れた場合」
2、「もしもワルシャワ行きの電車に乗り遅れた場合」
3、「もしもワルシャワ行きの電車に乗り遅れ、
ある女性と出会った場合」
という、3通りの可能性を描く。
そして、ただその電車に乗れたか乗れなかったかによって、
180度違った人生を歩むことになる。
結局、人生とは何が禍福を決めるかわからない。
そして、この3通りのどれもが、特に幸福であるとか不幸であるとは言い難い。
どれも同程度。
それぞれ、重苦しい人生がある。
人は、なんだかんだ言って、自分の意志以外の要素に人生を左右されることが多く、
かつ、それなりにどのような道であろうとも、一生懸命生きようとする。
と思いました。
佳き映画とは、常に誰かの人生をダイジェストで描いているから、
一本の映画を見ただけで考えさせられ、疲れます。
ポーランドの複雑な政治事情は相変わらず。
このような社会では、そもそも自分のやりたいこと、
やりたくないことの選択が難しい。
そして、自分のやりたいことをするのが難しい社会の方が、
おそらくは、よっぽど生きやすい、と思うのは私だけでしょうか。
さすがキシェロフスキ。
素晴らしい映画でした。
1986年。ゲオルギー・ダネリヤ監督。
旧ソ連全土で1520万人を動員した、幻の傑作。異色SF映画。
確かに面白いです。
私は常日頃から言っているのですが、
面白いSFとは、必ず人間の可能性の追求になり、心理的な物語になる、と。
したがって、いわゆるロボットやらスターウォーズのような派手な戦争、
または異星人との交流みたいな、
そういう物理的なSFには、個人的には興味ない。
心理的SFという意味では、もっとも優れた連作を、ポーランドの天才、
スタニスワフ・レムが、ファースト・コンタクト三部作と言われている、
『エデン』、『無敵』、『ソラリス』で残しています。
(私の大好きなレム!たぶん、私が一番好きな作家。)
『ソラリス』などは、本当の意味で、人間の深層心理の論理的追求だし、
こないだ紹介させて頂いた、伊藤計劃『ハーモニー』も、同じです。
『ソラリス』は、やはりソ連のタルコフスキーが、
すばらしい映画に作り上げております。
どうも、東欧系の人というのは、おそらくは政治的・歴史的制約のせいで、
心理的洞察に長け、風刺と皮肉、諧謔に富んだ物語を作るのがうまいらしい。
『キン・ザ・ザ』も、当時のソ連を、かなり皮肉っており、
なおかつ作品としても相当面白いものに仕上がっている。
この映画はかなり複雑な映画です。
少し、ストーリーを。
普通のロシア人ウラジミールと、グルジア人ゲデバンの二人が、
ひょんなことから、キン・ザ・ザ星雲の惑星ブリュク星へと飛ばされる。
これが驚くほど「ひょんなことから」なんですね。
悪ふざけみたいなきっかけ。
ブリュク星というのは砂漠の惑星。
非常に進んだ科学力をもっているのに、なぜか原始人みたいな見た目。
機械は凄い性能なのに、ポンコツ臭丸出しで、とても錆びついてる。
この何とも言えない論理矛盾。
そのうえ、人種差別もひどい。
地球人にはほとんど理解出来ない環境の違い。
コミュニケーションはとれているようで、ほとんどとれていない。
理解しあったかと思えば、全く理解出来ていない。
ディストピア映画と言われていますが、これはディストピアではない。
それは地球人的観点ですね。
これはこういう世界なのです。
幸福でも不幸でもない。
つまりは別世界です。
レムはそういうことがとてもよく分かっていた。
H・G・ウェルズが『宇宙戦争』を書いて以来、
SFとは、異星人と出会った場合、仲良く交流するか、
戦争するかの二択しかなくなってしまった。
ところが、レムは、出会っているのにコンタクトすらとれないし、
お互いに理解し合うことは不可能である、ということを描きました。
これは人間同士でもそうですよね。
・・・・『キン・ザ・ザ』に戻すと、
とても切ない物語でもあるんですね。
ラストは特に切ない。
地球に帰るのは簡単じゃない。
とてもいい映画でした。
美しい隣人。火曜10時、放映中。
このドラマを不快と思われる方はかなりいるに違いない。
実際、かなりいるらしい。
でも私は面白いと思う。
仲間さんの演技はとても下手。
壇さんは相当ぶりっこ。
それでもいい。
このドラマは、まずお子さんをお持ちの方が見たら不快に思うに違いない。
幸せな家庭の子供を奪おうとする、マイヤー沙紀(仲間さん)
母親の絵里子(壇さん)は、しつけのために多少厳しくするのが当然ですが、
それをいいことに、マイヤーはわざと、子供の言う通りにしてあげる。
幼い子供には、どちらが自分のためを思っているのか、
それがわからない。
いや、むしろ、自分にとって都合のいいことをしてくれる人を好きになる。
かわいそうに。
自分にとって都合のいいことばかりをしてくれる人が、
自分のことを思ってやってくれているとは限らないのに。
それだけではない。
マイヤー沙紀は絵里子の夫を色仕掛けで落とす。
幸せな家庭を、逆恨みでむちゃくちゃにする。
しかし、この逆恨み、
これぞほんとの逆恨みで侮れない。
なぜなら、マイヤー沙紀の子供と絵里子の子供は、
同じ日に別々のところで、大変な目にあい、
マイヤー沙紀の子は死に、絵里子の子は助かる。
これがマイヤー沙紀の動機です。
幸せとは、まさしくこういうものです。
誰かが幸せになるということは、誰かが不幸になるということです。
次元の低い話をすれば、
Hさんという女性にBさんが告白して付き合いだしたら、
Hさんを好きだった、CさんやAさんは不幸になる。
人間がお肉をたべられるのは、牛や鳥の死による。
入試の場合、誰かが落ちるおかげで誰かが受かる。
誰かが助かったと思えば、誰かが死んでいく、毎日。
幸福とは、多くの犠牲によって成り立つからこそ、
とてもかけがえのないものなのです。
マイヤー沙紀は、幸福であることがすでに罪だという観点から、
幸福に冷や水を浴びせかける。
それを不快と思われるのは、ある意味当然の反応です。
不幸。
私は、この観点を忘れないでいようと思います。
加古隆さん、1983年の作品。
加古さんは、私の世代では、
NHKの『映像の世紀』の「パリは燃えているか」という曲が有名だと思います。
(Youtubeあたりで簡単に聞けます)
しかし、そもそも加古さんは、
フランス政府給付金で留学した、れっきとしたブルシエなんですね。
そして、メシアンに学び、フリージャズへと展開する。
加古隆さんの作品でも、屈指の傑作と名高い、
最初期のフリージャズ作品『パラドックス』はまだ手に入れられていない。
そこで、ピアノ・ソロ作品で、こちらも傑作と名高い『夜明け』について。
このアルバムも持っている人はかなり少ない幻の作品です。
ラストの、「イマージュ」という曲は、
明らかにキースのソロコンサートの影響を感じますが非常に好印象。
「夜明け」「ヴァレンシア」「喪失の虹」も、
メランコリックな感じでいいです。
ちなみに「ヴァレンシア」は富樫雅彦さんが、加古さんに捧げた曲です。
次はマッコイ・タイナーの必聴盤「サハラ」か、
変化を続ける真の巨人マイルスの、
ロックと融合し、エレクトロニカの先駆となった、
「ビッチェズ・ブリュー」について書きます。
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言語学者、哲学者、文学者、サイバネティック学者である、
海馬浬弧による本、映画、アニメ、音楽、その他、
あらゆることに関するレビューログ。
私生活については一切書きません。7カ国語堪能。
独断と偏見に充ち満ちているため、不快に思われる方もいらっしゃるでしょうが、これも現代の歪みの一つだと思って、
どうかお許し下さいませ。
リンクは才能豊かな知人の方々なので、ぜひ。
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