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あらゆる事柄に関するレビューログ。 #kaibaricot
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私はジブリと共に育ちました。
ジブリの処女作であるナウシカは1982年より
アニメージュに連載。
83年生まれの私にとって、
ジブリはゆりかごのようなものです。

となりのトトロも大好きですし、
ラピュタはあんまり好きではないけれど、
作品としてはやはり宮崎駿らしいなあ、と感じます。
もののけも魔女宅も。


私は思うのです。
もしも、真の監督であれば、
話も一から全部自分で作ってみたいというのが、
至極自然ではないかと。
これはなにもアニメに限ったことではない。
真にクリエイティブな人間は、
他人の作った世界の演出で満足しない。
このことを私は度々主張していると思います。

だからこそ、
ナウシカもトトロもラピュタも優れていた。
新しかった。野心的だった。

しかし、ハウルもアリエッティも、ゲド戦記も、
既存の作品を用いている。
これは明らかにジブリの衰弱を表しているし、
一目瞭然、作品が全然面白くない。

その上、いつからか芸能人を声優として使うことは
当たり前のようになっている。
ナウシカの頃やトトロの頃には、
北林谷栄さんという優れた女優を起用しているものの、
そう頻繁に見られることではなかったはずだ。
モチはモチ屋に任せるべきだ。
アリエッティの神木君は下手すぎる。
声が作品から浮いている。

ゲドを監督した宮崎さんの息子も、
アリエッティの米林さんも、
なぜ若いくせに、他人の作品を使うのか。
それにゲドのように、
原作があまりにレベルの高い作品を用いると、
小さくまとめることしか出来ない。
黒澤明が羅生門を自分のものにしたようなことは、
並の監督に出来ることではない。
それゆえゲドもアリエッティもハウルも、
作品としても小品に過ぎない。

アリエッティについて言えば、
あまりにも唐突な終わりかたなのだ。
ハウルよりは見られる、と思って私は見ていたけれど、
ここからだ、ってところでいきなり終わる。

アリエッティの終わり方はまるで、
どうしようもない問題に直面し、
そこでアリエッティがジレンマにもだえ苦しむ部分を
単に排除しただけの、残念な終わり方だと思う。

主人公である翔との淡い恋にもっと悩み、
両親にもっと反発したり、
手術の成功を祈り応援したり、
そういうもっと苦労の描写があるべきだと私は思う。

これでは、ただ異文化をお互いに撫でて、
「こういう文化の違いもあるよね」という、
虚しい結末ではないだろうか。


私はまた思う。
ジブリの絵にはもう飽きたと。
監督が変わっても常に同じ。
宮崎駿の鋳型に、誰も彼もがはめ込んでいる。
演出もなにもかも、常に同じ。


宮崎駿は確かに偉大だと思う。
しかし、同じプロダクションであろうと、
監督や人が変われば、
それぞれの個性が出てしかるべきだ。

ジブリには衰滅の相が見える。
あきらかに子供だましだ。
宮崎駿が築いた確固たるブランド力で、
新作ごとに、
これからも一定量の観客は得るだろう。
だが観客はいつまでも馬鹿ではない。
世界で評価されるのは、ジブリの中でも
結局宮崎駿の作品のみに過ぎないように、
おそらくこのプロダクションからは
さらなる個性は生まれないだろう。


たぶん、宮崎駿が偉大過ぎるのだ。
そしてジブリの人はみんな優しすぎるのだ。

ジブリで成功しようとするのではなく、
新海誠さんが『ほしのこえ』を作ったように、
ゼロから、自分自身の道を築くことが重要である。
(ただ新海さんの新作はどうもジブリの影響が感じられる…)


来たれ、アニメーション映画のマキャベリスト。

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1980年、ゼマン最後の作品。

傑作切り絵アニメーション。
シュヴィツゲベルなんかに比べ、やはり第一に絵に特徴があります。
人物描写や自然描写に、チェコっぽい廃れたアルカイックさがある。

内容も面白いですよ。
音楽は豊富で、ユーモアにも富んでいる。
なんかいくつかの民話をくっつけたみたいな話です。

ゼマンはもともと特撮を得意としていたので、
この映画も単に切り絵だけではない。
水に落ちるシーンなどは、本当の水をうまく利用しているし、
鳥が飛んでいるシーンなども、どういう風に撮っているのやら、
よくわかりません。

とても面白いアニメーションです。



スイス出身のアニメーション作家。
スイスの中でも殊にフランス語圏。

絵筆を用いたドローイングから、縦横無尽の動きを生み出す。
視点や状況の変化、奇想天外な展開。
魅力的です。

ただし、絵それ自体には特徴があるわけではない。
まるで飲み物「ミロ」に描かれているような絵の人間が、
様々なメタモルフォーゼを遂げるといった具合。

何本も彼の短編を見て思うのは、
シュールレアリスム絵画の影響がかなり濃いということ。
デ・キリコやマグリットの影響は特に感じました。

ストーリー性は正直乏しいけれど、
代表作『78回転』はそこそこ見せられます。

XOXO



シュヴァンクマイエルという人は、きわめて映画監督的人物です。
非常に特異な性格を持つ監督ゆえに、
一部に熱狂的なファンを生み出しました。

殊に彼の人形を使ったアニメーション。
とても気持ち悪い。
『アリス』などは、たぶんいちばん気持ち悪く撮った監督でしょう。
雑音みたいな音は酷いし、兎はリアルすぎて気色悪い。
もちろん、これらは、シュヴァンクマイエルの良さです。

そして驚くべきはこの『アッシャー家の崩壊』
一人も俳優、すなわち人間を使わずに、
ポーの傑作『アッシャー家の崩壊』を描き切っています。
おそらく、これ以上に優れた
『アッシャー家の崩壊』の映画は後にも先にも出てこないでしょう。

凄いとしか言いようがない。
この映画に俳優なんて邪魔なものは実際いらない。
『アッシャー家の崩壊』における、
純然たる観念的な「恐怖」は、
人間の不在により、とても効果的に演出されているのです。

後半へ次第に高まり行く不安、恐怖。
すべては絶妙な実写アニメーションと、カッティング、
モンタージュによって構成されているのです。

さすがにずば抜けている。

カメラや映画をやる人は、一度はこういう作品を見て、
俳優に頼らないカメラワーク・演出というものを知るべきです。

シュヴァンクマイエルのこの人を食った工夫には、
感嘆しかありませんでした。


作画、メビウス。監督はルネ・ラルー。
原作はステファン・ウル。

メビウスは日本にもファンが非常に多い。
宮崎駿や大友克洋、松本大洋などが強い影響を受けた、
BD(バンド・デシネ)の大家です。
特に、『アルザック』は有名。私も持っています。

そのメビウスとルネ・ラルーがタッグを組み、
邦訳が一冊もない、ステファン・ウルのSF小説を題材に撮った、
アニメーション映画。

この映画を借りる前、私はなめていました。
メビウスの絵が、あんまりメビウスっぽくないな〜と思い、
なんかアメコミみたいな感じだと。
それにちょっとB級を感じさせるタイトル。

しかし、出だしのシークエンスを見ただけで、
この映画が傑作なのはすぐにわかりました。このスピード感。
主人公ジャファールの渋いかっこよさ。
なんとなく考えさせられるストーリー。
ユーモラスな描写。
大胆で美しい構図とアイデア。
卓越したカッティング。

かなり面白いアニメーション映画でした。
まさかこれほどとは。

オチはわりとよくあるオチですが、それも心地いい。
この映画を見ると、『アキラ』や『ナウシカ』がいかに、
メビウスの影響を受けたかよくわかる。
そういえば、本来の『ナウシカ』はBDサイズですね。


見ていないので、あれなんですが、
新海誠が新作で、新海節を失ったように思われるのは、
まず第一に彼一流のテーマを失ったように見えるからです。
新海監督のテーマとは、初めから常に「距離と時間」です。
彼はあのテーマによって新海誠であったと思う。
絵によってではなく。
それは明らかでしょう。だって彼は画描きではない。
あくまで『ほしのこえ』もアフターエフェクツ。

それに対し、最近、ユーロ圏を徹底的に見漁って感じるのは、
彼等はまず絵に、明確な個性を持っているということ。
つまりストーリー重視ではなく、形式重視。
だからシュールな作品がいきおい多くなる。

宮崎駿もその息子も、アリエッティの人も、
新海さんの新作も、
残念ながら、どれもこれも日本人の目に慣れ親しんだ、
絵の似通ったセル・アニメーションです。

アニメーションの定義を、
仮に、静止画の連続、とするのなら、
世界のアニメーションの広さには新鮮な驚きを感じます。
厳密には映画でさえ、フィルム時代は1秒24コマの静止画なんですが、、、。

映画を作るためには、絶対にアニメーションを学ぶ必要がある、
と確信しました。

ルネ・ラルーとメビウスの仕事を、
Youtubeではなく、機会があればDVDでぜひ見てみて下さい。


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プロフィール
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海馬浬弧
性別:
女性
自己紹介:
言語学者、哲学者、文学者、サイバネティック学者である、
海馬浬弧による本、映画、アニメ、音楽、その他、
あらゆることに関するレビューログ。
私生活については一切書きません。7カ国語堪能。
独断と偏見に充ち満ちているため、不快に思われる方もいらっしゃるでしょうが、これも現代の歪みの一つだと思って、
どうかお許し下さいませ。
リンクは才能豊かな知人の方々なので、ぜひ。
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