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あらゆる事柄に関するレビューログ。 #kaibaricot
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伊福部昭は日本が誇る名作曲家です。
私の中では、武満徹なんかよりも、芥川也寸志なんかよりも全然凄い。
第一に、武満は、わけのわからない曲ばかりで、聞いていて楽しい曲が全然無い。
現代音楽はついていけない曲が多い。

しかし、伊福部昭は違います。
私が彼を知ったのは、アレクサンドル・チュレプニン賞を受賞した、
『日本狂詩曲』二章構成の大傑作です。
ラヴェルがチュレプニン賞の審査員にいると聞いた伊福部さんは、
この野心的な作品をパリに送ります。
そこで第1席となり1936年、セヴィツキーの指揮でボストンにて初演。
あの私の大好きな『トゥオネラの白鳥』のシベリウスの激賞をうける。
ちなみに『トゥオネラの白鳥』はベームの指揮が最もいい。

『日本狂詩曲』について少しお話すると、
はじめはヴィオラの独奏。
これが素晴らしく独創的。
そして第二楽章では、打楽器が暴れ回る。
バルトークとかもそうですが、当時のはやりでもある民族的な音楽です。

伊福部さんは、常に力強い旋律とリズムを持っています。
かの有名なゴジラの音楽も伊福部昭です。
映画音楽も手がけている。
この時期には、早坂文雄もわりと似たタイプの音楽を書いていましたが、
早坂より正直、格段にいいの。
早坂さんは、黒澤映画の『羅生門』の名曲、ボレロもどきを作っている。

さて、本作は伊福部さんのギター曲集。
これがまた驚くほどいい。
伊福部さんは、サロメを題材にした舞踊曲なんかもあるし、
結構いろんなジャンルの曲があるのだけれど、このギター曲集は素晴らしいです。

特に、箜篌歌は絶品です。

どの曲も静かで、瞑想にふけっているようなメロディー。
非常に日本的なギター。
イエペスとかと比べると面白いよ。

疲れた頭には最適。
どうも脂っこい曲、うるさい曲に辟易としているときは、
だまされたと思って、この静謐なメロディを聴いて下さい。

かつて、マルローは言いました。
日本に来たときに仏教美術なんかを見て言ったらしい。

「静謐は、悲劇より、なお悲痛である」と。



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君は『黒死館殺人事件』を読んだか?
私は苦労して読んだ。
最近、ようやく読み終えた。

1934年に江戸川乱歩が創刊した雑誌『新青年』で連載された、
日本探偵小説史上の三大奇書の一つ。
あとは『虚無への供物』と『ドグラ・マグラ』ね。
どれも長い。

小栗はその晦渋を極めた文体から、
当時は幸田露伴などのいわゆる純文学作家からも一目置かれていた作家である。
今では忘れられた作家の一人。

西の横綱が夢野久作なら、東の横綱は間違い無く小栗虫太郎だろう。
彼は、探偵小説のみならず、『白蟻』という、これまた難解な文体の、
傑作中編がある。
正直、夢野のほうがよっぽど読みやすい話が多い。
あとはこの頃で言えば久生十蘭にも傑作がある。
江戸川乱歩の周りの雑誌には結構面白くて、
忘れられた作家がいる。
猟奇的な作品を書いた作家も多い。
お勧めは大坪砂男『天狗』『零人』

小栗虫太郎はとにかく、難しい。
そして、極度の衒学趣味。
しかしその衒学の典拠たるや、なかには疑わしいものも多数あり。
にもかかわらず、その「似非」知識を、本当の知識のように振る舞わせる、
豪華絢爛な虚無。空中楼閣。

おそらく、1ページあたりに30ばかりの註が必要なのではないかと思われるような、
固有名詞やエピソードの列挙。
とてもとてもついていけない。

その結果、話の全容はまったく見えてこず、
一体なにがどうなったのか、全然わからない。
へんてこな病理学やら占星術やら神秘哲学やら宗教学、心理学、暗号学を駆使し、
わけのわからない殺人事件を解き明かす。

すべて、稀代の麒麟児、法水麟太郎が解き明かす。

それにしても、読んでいてさっぱりわからない。
字面を追うのがやっとである。
難しすぎるし、博覧強記の彼がたびたび引用する文献は、
全くなじみがないばかりでなく、存在しているのかすら怪しい。

法水恐るべし。
彼をもってすれば、シャーロックホームズだろうが、
ポワロだろうが、ルパンだろうが、明智だろうが、みんなふっとぶ。
とにかく、途中から犯罪が一体なんなのか、それすらわからなくなる、
ディレッタンティスムの脱線ぶり。
理解できない。

私はチェスタトンが特に好きで、
ブラウン神父シリーズは愛読した。
あの、諧謔と皮肉に溢れた、敵の精神へ迫っていくブラウン神父の謎解きは、
いかにもおしゃれでした。
チェスタトンにせよ、ドイルにせよ、皆戦前の人である。
探偵小説は実は、戦前に黄金時代を迎え、今はもう見る影なし。
東野とか残りカスにもならない。

『黒死館殺人事件』、眠くなること間違いなし。
もし法水が気に入れば、『聖アレキセイ寺院の惨劇』もぜひ。
よくもまあ、こんな小説を書こうと思い、
なおかつ書けたもんだと、開いた口がふさがらない。
天才の仕事です。
小栗のファンは結構昔は多かったけれど今は聞かないね。
松山俊太郎、澁澤龍彦、三島あたりは小栗を尊敬して止まなかったらしい。

私にはコロンボくらいがちょうどいいです。


90210、新ビバリーヒルズ青春白書
NHK毎週土曜、午後11時から。

非常に面白い。
というか自分が面白いと感じるものしか、普通見ないですよね。

かつてのビバヒルと同じく、舞台はウエストビバリー高校。
そこに通う、ありえないくらいリッチで大人びた高校生活。
それは昔のビバヒルの設定とかわらない。
ビバヒルは今も昔もリッチなのだ。

日本の田舎高校生達が見たら、
自分たちの青春はなんなのかと疑いを抱かざるを得ないような日常。
かくいう私も、高校時代はもうずいぶん前のことだけど、
自分の高校時代は一体なんだったのか、疑問を感じてしまった。

けれども、これはアメリカの、実際のビバヒルの高校生にとっても、
非現実的な高校生活らしい。
事実、登場人物の実年齢は、皆、20過ぎ、ナヴィドに至っては26か25。
ほとんど、22~23の間です。

日本の金八先生なんて、子供のお遊び。
ヤンクミとかに至っては、しょうもないファンタジーレベル。
なんといっても、90210は、こんな設定なのにも関わらず、リアルなのです。
アメリカのドラマは、24にしろ、なんにしろ、
底流は常にリアリスムであり、それがアメリカという国の、お国柄なのです。

リアリスム、これこそが今の日本が忘れているものです。
日本のドラマを見て下さい。
あらゆるドラマが、リアルじゃない。
したがって、誰にも感情移入できない。
アニメのドラマ化的な、ファンタジードラマばかり。
一体誰を喜ばせるためのドラマなのか、さっぱりわかならない、
ビバヒル的ありえなさではなく、本当の意味でありえないドラマばかり。

私は断言しますが、これはドラマに限らず、
日本に最も必要なのはリアリスムです。

アメリカは常に日本が終わったところからはじまる。
日本は付き合うまでが、結婚するまでがドラマなのに、
アメリカは付き合ってから、結婚してからがドラマなのも、
リアリスムに裏打ちされている証拠なのです。

さて、私は今回の90210では、エイドリアナが一番好きです。
綺麗だと思います。

ストーリーはもの凄いスピードとテンポで進み、常に生み出される新しいエピソードは、必見。ぜひ、ご覧下さいませ。




婦人公論、No.1302より。
中村うさぎさんの特別寄稿『閉経した私の欲望はどこへ向かうのか』について

うさぎさんは私が尊敬している女性の一人です。
文春さんで連載されている、彼女のコラムも毎週拝読しております。
そこで、ここ3ヶ月くらい、閉経についてよく書いていたのね。
男が「閉経」という言葉に過剰反応すると。
そこでうさぎさん曰く、男にとって「閉経」って結構、
いまだにショッキングな話題なのか、と思ったと。

さて、婦人公論は女性の読む雑誌です。
おそらく読者の9割〜8割は女性でしょうが、
男性の皆様もぜひ、読んでしかるべきものです。
はっきりと「役に立つ」ものです。
実用的雑誌です。

No.1302の特集は、「大人を満たす性と愛」
婦人公論さんお得意のテーマです。
以前は、工藤美代子さんの『炎情』というルポが連載されていましたので、
愛読していたのですが、今は亀山早苗さんというしょぼい人が『渇望』と、
名を変えて連載中。

少し脱線させて下さい。
『渇望』ですが、書き方がへたくそすぎるし、いただけない。
まず、はじめの段落に、必ずしょうもない一般論なのか自分の意見なのか、
よくわからない導入を設けるけれども、これが全くもって効果なし。
全然いい導入ではない。
かてて加えてオチも同じように、つまらないまとめをする。
亀山さんは正直、人生経験が足りない。
(私が言うのもなんですが、これはそういうレビューログなんで、
あえて言わせて貰います)

まったくもって、それは何の経験もない香山リカが『魔の山』読んで、
人の苦しみがわかる、とほざくのと同じことです。

それはさておき、うさぎさんの寄稿に立ち返ると、
非常に論理が明快、筋が通っている。
うさぎさんはいつも、論理的。
わかりやすい。
そして、彼女のまあ、少しばかりやりすぎた「現代」的人生を知っている人なら、
彼女の説得力が、どこから生まれてくるか、すぐわかるでしょう。

彼女は自分の経験からはっきりと物語ってくれます。
曰く、たとえ粗チン(失礼!)でも、「自分が好きだと感じた相手から、
女として承認される」ことが快感であり、
快感はしたがって、精神的な面に負うことが多いと。
あばたもえくぼとはよく言ったものですが、
つまり、彼女に言わせると、ヘタだろうが、ぎこちなかろうが、
自分が好きな相手とならそれはそれなりに快感になり、
したがって、一歩進めると、よく言う「相性があわない」みたいなのは、
結局、相手を好きではないからだ、ということになります。

さらにうさぎさんは自分の快感を解剖し次のように語ってくれます。
好ましい相手から「女」として求められること、それが快感であるということは、
「女」である「自分」に陶酔することだから、
快感とは本質的にナルシシックなんだと。

そこで閉経の話にうつると、彼女曰く、閉経寸前の時期は、
世に言われているように、男をあさり回っていた。
それというのも、「女」としてのアイデンティティが危機に瀕していたから、
「女」として自己確認をする必要があったからだろう、と。

すべて、筋が通っています。
彼女の閉経体験は、私は正直、もちろん敷衍すると危険はありますが、
結構あてはまる人もいるんではないかと思われます。

女性に限らず、快感の本質は、ナルシスムにあるというのもうなずける。
「女は女を演じることに快感を覚える」というのは、とりもなおさず、
「男は男を演じることに快感を覚える」に置き換え可能です。

「女とはコスプレである」by 中村うさぎ
閉経後の彼女は、セックスで自己確認の必要を無くしたと言われています。
その結果、まるで憑きものが落ちたかのようになったと。

うさぎさんが好んで語る、
木嶋佳苗容疑者の虚飾、虚言、虚栄心、
「虚」はすなわち「演じる」ことです。
「演じる」とは「コスプレ」です。
「コスプレ」から「ナルシシスム」は半歩程度しかないでしょう。

虚をあなどるなかれ。

エロティスムはやはり、脳髄のものなんですね。

・・・・・

この号は、他にも面白い記事が満載。
特に、ソマリアの因習、女陰切除(Female Genital Mutilation)で、
約1億4千万人の人々が苦しんでいる話は、
ヤコッペティの『世界残酷物語』を思い出させます。




昭和残侠伝シリーズ、第7作。1970年。

ああ。
本当にいい映画です。
なんで、こんなに私は、昭和残侠伝シリーズが大好きなんだろう?
昨日、風邪で死んでいたのに、これを見出すと、
すごいドキドキして元気百倍でした。

昭和残侠伝は、日本映画史に残る傑作ヤクザ映画シリーズです。
ヤクザ映画は、鶴田浩二に始まり、
高倉健で頂点をむかえ、
藤純子で終わる。

鶴田浩二も藤純子も最高です、もちろん。
それに藤純子、めちゃくちゃ綺麗です。
こんなに綺麗な人いません。
私は、藤純子さんの声も好きです。
昭和残侠伝には、鶴田浩二が出ているのもあるし、
藤純子が出ているのも結構あります。

さて、『昭和残侠伝、死んで貰います』はシリーズ第7作。
以下に私が大好きな理由をお知らせします。

第一に、池部良さん。
残侠伝シリーズは最盛期がちょうど、学生闘争時代で、
世の中が混沌としていた時なんですね。
観客は、全共闘の奴らやちんぴら。
彼らは異様な熱気で、健さんや池部良に自己投影して見ていたわけです。

当時の流行語で名台詞。
池部良がクライマックスで健さんに言う、「ご一緒願います」
はもうほんとうに、がつーんときます。
熱い。

いやいや。
残侠伝については語っても語り尽くせないんだけど・・・
とにかく池部良さんがいい。
池部さんはそもそも戦中から大スターでしたが、
東宝だった池部さんを、ヤクザ映画の多い東映の名プロデューサー、
俊藤氏が口説き落とす。
「高倉を男にしてやってくれ」と言われ。

第二に、明確な型がこの映画にはある。

たとえば、ラストに討ち入りに行くシーン。
健さん演じる秀次郎と池部良の重吉が肩を並べて歩き、
健さんが歌う「唐獅子牡丹」がかかる時、
たいてい、雪が降っている。

日本人にとって、雪とはもっとも重要な日。
決意の日なのです。

たとえば、藤純子の傑作シリーズ、緋牡丹博徒シリーズの、
最高傑作、『緋牡丹博徒、お竜参上』では、
誉れ高い「雪の合羽橋」のシーンがあるし、

もっとわかりやすく言えば、赤穂浪士です。
四十七士が吉良邸に討ち入りに行くシーンは必ず雪。

雪とは「決意」、あるいは「覚悟」です。

また、多少の違いはあるけれども、
池部さんは必ずはじめ敵で登場し、
最後は義理と人情で、健さんと同じ道を歩むことになり、
最後の殴り込みで必ず死ぬ。

これはすべて、見る前から決まっていることだし、
わかりきっていることなのに、
それでもなお、見ていてもの凄く面白い。

つまり、ストーリーは先がわからないということや、内容も確かに重要ですが、
第一に、形式が重要なのです。
ひとたび、強力な形式を見いだせば、あとはその流れに身をまかせるだけで、
とてつもないダイナミスムが生じる。
安心して見られる。

・・・・・・・・と、長々と書いても仕方ないので、

女性の私が大好きなので、きっと女性の方もご覧頂けると思います。
草食男子は、一匹たりとも出てきません。

最高傑作と言われているのは、
『昭和残侠伝、破れ傘』最終作です。
鶴田浩二も出ています。

仁義なき戦いは、一番はじめだけ。
極妻とか、ほんとしょぼいし、たけしのヤクザ映画も全然駄目。

ヤクザ映画は、健さんか鶴田浩二か藤純子。

すかっとします。
ストレス解消に、ぜひ。
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HN:
海馬浬弧
性別:
女性
自己紹介:
言語学者、哲学者、文学者、サイバネティック学者である、
海馬浬弧による本、映画、アニメ、音楽、その他、
あらゆることに関するレビューログ。
私生活については一切書きません。7カ国語堪能。
独断と偏見に充ち満ちているため、不快に思われる方もいらっしゃるでしょうが、これも現代の歪みの一つだと思って、
どうかお許し下さいませ。
リンクは才能豊かな知人の方々なので、ぜひ。
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