あらゆる事柄に関するレビューログ。
#kaibaricot
やっと読み終えました。
当時、中央公論の編集長だった宮脇俊三さんの、
国鉄(現JR)全線を乗り尽くした記録。
日本ノンフィクション大賞受賞作でもあり、
数々の大御所の作家達が、その文体、内容を絶賛しております。
かくいう私も、宮脇さんに触発され、いわゆるプチ「乗り鉄」になりました。
現JRは、赤字路線をほとんど廃してしまったため、
今現在、JR全線を乗り尽くそうと思ったら、宮脇さんの頃の、
5分の1くらいの苦労ですむでしょう。
驚くべきは、当時、要職に就いていて、
恐ろしく忙しいはずの宮脇さんが、このような偉業を成し遂げたということ。
金曜の夜になるたびに、夜行列車に飛び乗る宮脇さん。
もちろん、家族はいます。お子さんもいます。
だから、普段は何も言わない奥様も、時には、
「また行くの」と呟いてしまう。
年末年始、ゴールデンウィーク、休みという休みを悉く、
この全線乗りつぶしという作業に費やす。
そして、宮脇さんほど時刻表を熟読している人物であるからこそ、
特急に鈍行で追いつき、
同じ時間に発着するはずの列車を乗り継ぐ、という、
推理小説顔負けの軽業をやってのけるのです。
山崎正和氏が解説で面白いことを書いておりますが、
確かに、電車の路線とは、
本来、日本全国を等質価するものです。
ですが、宮脇さんの描き出すものは、等質価できない、日本の「地方」なのです。
私個人的には、福岡は田川、直方、を走る炭礦線群です。
いまでは、ほとんど廃線となってしまいましたが、
当時は凄いごちゃごちゃ、縦横無尽に走り回っておりました。
ちなみに、宮脇さんが最後に残してしまった路線は足尾線でした。
これは、現在は第三セクターが運営している、
わたらせ渓谷鐵道です。通称、わ鐵。
私は偶然にも、この路線に乗ったことがありますが、
宮脇さんとほぼ同じで、足尾銅山の坑道入り口がある、
通洞駅までしか行ったことがなく、その先の、足尾、間藤を残しております。
渡良瀬川沿いに走るわ鐵、途中、銅山の頃の廃墟になった工場が、
何とも言えないはげ山を背景に、異様な景色です。
ぜひ、日光ではなく、足尾へ、おいでませ。
鐵道旅行をしたくなったら、ぜひこの本をご参照下さい。
かくいう私も、日本全国を鐵道で旅しようと思っています。
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1983年。ATG映画です。
松田優作、伊丹十三、由紀さおり。
この映画を見たのは二回目。
やはり面白い。
森田芳光は、いまではつまらない馬鹿監督ですが、
この作品は明らかに優れている。
家族というものが、いかに欺瞞だらけで成り立っているか、
このごくごくありふれた一般家庭、沼田家がそれを証明してくれます。
象徴的で有名なシーンである、この横一列にならんだ食事風景。
彼等は決して向きあわず、黙々と自分のことを考えて生きている。
聞こえてくるのは、雑音でしかない生活音ばかり。
「家族」というゲームをこなしているだけの、人間関係。
この地味なテーマの映画がなぜ、ここまで面白いのか。
第一にキャスティングが優れている。
松田優作の家庭教師、吉本や、
由紀さおりと伊丹十三の夫婦は、すばらしい演技です。
また、息子二人もいい。
第二にユーモアが豊富。
見ていて思わず吹き出してしまうシーンが多く、
それらはあくまでも家族の日常生活に則って、
リアリズムなんだけれども、映画として面白くするために、
デフォルメされているのです。
映画は何を撮るかではなく、いかに撮るかだ、ということを再認識させてくれます。
「家族」というゲームのルールをぶちこわし始めたのは、
闖入者である、松田優作。
ラストは、異様に倦怠感溢れる、やけにありふれた日常。
こうして今日も日が暮れるわけです。
家族というものを、面白い視点から捉えた作品。
今回見直してみたら、色々気がつくことがありました。
なんでも、少なくとも二回は、読んだり見たり書いたりしないといけないですね。
プロレタリア文学・戦争文学の秀作。
忘れられた作家の黒島伝治。
私の最近のテーマは、女性・戦争・性・労働・誘拐・死体・主張なので。
陰鬱な話です。
要するに、シベリア戦線で戦っている日本兵が、
八甲田山よろしく遭難し、雪に埋もれ、春になり死体がみつかり、
渦巻ける烏の群は、死体を啄んでいるというお話。
救いはありません。
淡々と描かれています。
ロシア人の女性の取り合いから、ある一個中隊が、上官の怒りを買い、
もっとも厳しい地域に送り込まれ、遭難してしまう。
「彼等が、いくらあせっても、行くさきにあるものは雪ばかりだった。
・・・雪が降った。
白い曠野に、散り散りに横たわっている黄色の肉体は、埋められていった。
雪は降った上に降り積もった。倒れた兵士は、雪に蔽われ、暫くするうちに、
背嚢も、靴も、軍帽も、すべて雪の下にかくれて、彼等が横たわっている痕跡は、
すっかり分からなくなってしまった。
雪は、なお、降り続いた。……」
『渦巻ける烏の群』より引用。
映画『八甲田山』の雪の描写を思い出しました。
あの凄まじい雪との戦い。
あの真っ白な世界こそ、死の世界。
いつか私も、八甲田山の雪を見てみたいと思っています。
1973年、ジャン=ルイ・トランティニャン、ロバート・ライアン
レア・マッサリ、ティサ・ファロー。
監督はルネ・クレマン。
脚本はジャプリソ。
珍しくカナダを舞台に繰り広げられる、
孤独なアウトロー達のお話。
以前、ジャプリソ映画の特徴を、シシリアンなどでお話しましたが、
これも同様に、雑な話です。
かなり無茶苦茶だし、支離滅裂。
それを無理矢理に、男の友情、男の馬鹿さでまとめようとする。
が、もちろんまとまらない。
ジャプリソには『昭和残侠伝』等を見て、形式というものを学んで欲しい。
話が無茶苦茶すぎる。
特にいただけないのが、ジャン=ルイ・トランティニャンの役。
彼がロマ人たちに追われている理由が、全然理解できない。
これでは彼はアウトローではないじゃないか。
それに、なんでラスト近く、ナイフでただ刺されているだけなのか。
とどめを刺されないのか。
ロマ人たちの設定があまりにも曖昧だし、適当すぎる。
第一、邦題が、
全くなんでこんな題になったのか、意味不明。
原題と全然違うし。
星、一つですね。
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言語学者、哲学者、文学者、サイバネティック学者である、
海馬浬弧による本、映画、アニメ、音楽、その他、
あらゆることに関するレビューログ。
私生活については一切書きません。7カ国語堪能。
独断と偏見に充ち満ちているため、不快に思われる方もいらっしゃるでしょうが、これも現代の歪みの一つだと思って、
どうかお許し下さいませ。
リンクは才能豊かな知人の方々なので、ぜひ。
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