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あらゆる事柄に関するレビューログ。 #kaibaricot
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時雨沢恵一著『キノの旅』On 電撃文庫。

今、非常に勢いのある、ラノベ界。
その中心的役割を担っているのが、アスキーの電撃文庫です。

『キノの旅』は、電撃文庫の中でも、歴史は古く、
現在も続いている古典的でかつ、人気のある作品です。
例えば、『デュラララ!』の中で、遊馬崎などが、時折、
「キノの旅の新刊でないかな〜」とか話しています。
最新刊は第14巻です。
わりと最近出ました。

どういう形式の物語かと言うと、
キノという少女が、エルメスというモトラド(バイク)とともに旅をする。
エルメスはバイクだけど、話すことができます。
そして、旅するのは架空の国々。
したがって、各章、「〜の国」というのが大半。

言ってみれば、『銀河鉄道999』に似た形式です。
999は、様々な惑星や宇宙人に会い、
そこから色々な教訓を得る。
『キノの旅』も同じです。
様々な国へ行き、キノの醒めた目で、各国の人達を見つめる。
すると見えてくる、寓意。

さて、ここからは私見です。
「電撃文庫」研究から読み始めましたが、
正直言ってあまり面白くないんですね。

なんていうか、999の場合、あくまでもゴール地点があったのだけど、
なんか教訓とか寓意を見せたいがために、後から国をつくったみたいな設定。
だから、そのような国がある必然性が、よくわからない。
その国の存在意義を全く説明していない。

作者の言いたいことを言うために作られた国々のような感じが、
はっきりと透けて見えて、キノがとても嫌味に思える。
そのうえ、エルメスが、アニメの時もそうでしたが、
とても「うざい」キャラなんですね、エルメス。
なんか、鬱陶しい。邪魔している。

それに、私にはキノの哲学のようなものが、とてもしょうもないものに思える。
つまり、キャラクターに魅力を感じられないのです。

よくもまあ、こんなばかげた話を、14巻も続けたものだ、というのが、
正直なところ。

もっと、色々な国がある必然性を説明して欲しいし、
人間という存在は、こんな単純なものではない。

キノがやけに傲慢で偉そうに思える。
それに、会話文が、私にはとても下手に思えます。

と、ひどいことばかり書いてきましたが、、
よろしければ、アニメなどから入ってみて下さい。

また、電撃文庫について書きます。


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集英社新書
たまには新書について書こうと思います。


まず、私は、「語学で身を立てる」つもりはありません。
が、ここ数ヶ月、わけあって、数カ国語を同時に勉強中です。
英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、そして韓国語もやっています。
(ロシア語、ポーランド語もわずかに)

本書にも詳しく指摘されていますが、
つとに思うのは、英語という言葉の特殊性です。
日本人は、外国語というと、すぐに英語を考えがちで、
英語教育に慣れ親しんでいますが、他のヨーロッパの言語をしっかり学ぶと、
より英語というものがよく分かります。

まず英語には名詞に性がありませんし、
ゲルマン系の言葉にみられる、格変化もありません。
しかし、ドイツ語やフランス語を学ぶと、
文章の構造をしっかりと学ぶはめになり、より論理的な読解力が培われます。

たとえば、英語は、しばしば形容詞がどこにかかっているか分からず、
また動詞の変化も最小限に抑えられている言語であるため、
語順が非常に重要視されている言語です。
そのため、それぞれの語が孤立し、非常に抽象的な言語なのです。

ところが、フランス語やドイツ語がもつ、名詞の性は、
形容詞がどの名詞にかかっているかを明瞭に示し、
また、関係代名詞の先行詞も英語に比べると、明示されている場合が多いです。

英語は、単語と単語をならべ、ある程度伝わってしまう面もある、
抽象的な言語なんですね。
だからこそ、多言語同時に学びつつ、英語にもアプローチするという方法が、
より効率的である、と考えられるわけです。

なお、本書とは関係ありませんが、韓国語と日本語は非常に似ています。
今度、書こうと思いますが、
蓮池薫さんの『蓮池流韓国語入門』(文春新書)に、重要な類似点として、
日本語と韓国語の語順を挙げていますが、これは大きな利点です。
(厳密には語順が一緒ではない場合もありますが)
両者とも、言語学的に言えば膠着語という言語に属しております。
遠く離れたフィンランド語も、膠着語です。

語学談義は、まだまだ尽きないのですが、
本書を読むと、
いわゆるマンツーマン教育が流行っている語学学校の正しい使い方、
セレブが好むインターナショナルスクールの無意味さがよくわかります。

どの言語を学ぶにせよ、日本語を疎かには絶対にできないということを痛感します。

気が向いたらぜひ。

明日は、電撃文庫の火付けラノベについて書こうかなーと思っております。



1979年、タルコフスキー監督。



A&Bストルガツキーの『ストーカー』と『願望機』を足して二で割った翻案。
黒澤明の『羅生門』的な。
しかし、黒澤のほうがよっぽど野心的ではあります。

『ストーカー』とはいわゆる私たちが想像する意味での、
つきまとう人のようなストーカーではなく、密猟者、
という意味です。

タルコフキーは物凄い映像で、出だしから見る者を引き付けます。
圧倒的に静的な、映し出すのは極端に廃れた映像なのです。
SF映画史上に残る傑作であることに間違いはありませんが、
個人的には『ソラリス』のほうが映画としては優れていると思います。

というのも、『ストーカー』のほうは、映画を見ると、
原作のほうがより面白いと感じるからです。
なぜなら、原作のほうが、動きがある。
しかし、タルコフスキーは、動きを一切取り払って、
極端に静的な映画へと仕上げております。
私は、もう少し、動きを出してもこの映画を損なわなかったのでは、
と思いますし、いかんせん『願望機』とドッキングしてしまったことが、
よくないと思えて仕方ありません。

宇宙人が来訪し、去っていったとされる、「ゾーン」
「ゾーン」に一歩でも入ると、
あらゆる物理学の法則を無視した、予期せぬ事態が起こる。
世界中の科学者たちが「ゾーン」を研究するのだが、
一向に謎はつかめない。
そんな中、命がけで「ゾーン」へ侵入し、
宇宙の痕跡を刻まれた、見た目は地球のものだが、
不可思議な状態におかれた物質を盗み出す、「ストーカー」がいた——

おそるべき想像力と筆致で書かれる「ゾーン」
数々の罠と犠牲。
そこの最奥部には一体何があるのか。

レムのファースト・コンタクト三部作にも負けない作品です。
原作を読んだことがなければ、タルコフスキーの映画も半減でしょう。

映像がとにかく凄いです。

三島由紀夫も絶賛した、SF史上最高傑作と誉れ高い作品。

クラークの想像力の強靱さに脱帽しました。

人類が宇宙に飛び立つ時、突如、地球の空を蔽った大艦隊。
人類のこれまでの歴史は幼年期に過ぎず、新しい時代がはじまろうとしていた——

とても切ない話です。
人類の長い営為が、実はすべてむなしいものであったということを、
さらに上の存在、「オーバーロード」たちの出現により知らしめられる。
「オーバーロード」とはよくいったもので、
神を越える存在、ということですね。
しかしながら、「オーバーロード」さえ、
さらに上の存在により支配されているということが判明します。

こういうものを読むと、人間の人生のむなしさを感じます。
一年のはじめにいかがでしょうか。


ついに今日で2010年も最終日。
今年読んだ本、見た映画、アニメ、聞いた音楽のベスト10をします!


今年読んだ本で面白かったもの、ベスト10。

1位:『砂漠の惑星』スタニスワフ・レム
2位:『百億の昼と千億の夜』光瀬龍
3位:『芋虫姫』N・Z・キンスキー
4位:『ストーカー』A&B・ストルガツキー
5位:『木曜の男』(再読)G・K・チェスタトン
6位:『贋久坂葉子伝』富士正晴
7位:『メッセンジャー』N・Z・キンスキー
8位:『風の盆恋歌』高橋治
9位:『バベル17』サミュエル・R・ディレイニー
10位:『宇宙船ビーグル号』A・E・ヴァン・ヴォークト

番外編。
『文字の現在・書の現在』石川九楊
『言語世界地図』町田健
『甦るヴェイユ』吉本隆明
『真夜中のパルス』倉本侑未子
『内部の人間の犯罪』秋山駿

こうしてみるとSFが多い。ベスト10に入っていないものも含めて、
とにかくSFをよく読んでいる年ですね。
とりわけ、レムやストルガツキーは東欧を代表する、20世紀の重大な作家であり、
単にその影響はSFに留まりません。
レムはボルヘスのような作家ですし、ノーベル文学賞に値すると思います。
ストルガツキーの『ストーカー』はタルコフスキーの映画でも知られていますが、
非常に優れたSFです。
光瀬龍氏は日本人離れした、とてつもないSFです。
タイトルも素晴らしいものですが、キリスト、ブッダ、弥勒、
阿修羅王が登場する、非常に壮大なストーリー。
秋山駿氏の『内部の人間の犯罪』はぜひとも読むべき、李珍宇事件などを扱った、
類い希な犯罪論集です。
もちろんチェスタトンも面白い。
来年はさらに、言語・文字・可能性というものについて考えていきます。



今年見た面白かった映画

1位:『夜の終わりに』アンジェイ・ワイダ
2位:『デカローグ』クシシュトフ・キシェロフスキ
3位:『フェイシズ』ジョン・カサヴェテス
4位:『アルジェの戦い』ジロ・ポンテコルヴォ
5位:『アメリカの影』ジョン・カサヴェテス
6位:『デルス・ウザーラ』黒澤明
7位:『昭和残侠伝、死んで貰います』マキノ雅弘
8位:『家族ゲーム』(再見)森田芳光
9位:『地下水道』(再見)アンジェイ・ワイダ
10位:『ゲッタウェイ』(再見)サム・ペキンパー

本でもそうですが、私の中でポーランド当たり年でした。
来年か、さ来年に、絶対ポーランドへ行きたいと思います。
キシェロフスキやワイダは、すごい監督です。
あと、黒澤の『デルス・ウザーラ』はまさかここまで面白いとは、
という感じで、アカデミー外国語映画賞を受賞したのも納得。
しかし、今の私にピッタリかつ見習うべきは、
間違い無く、カサヴェテス。
彼の『フェイシズ』『アメリカの影』には強く感銘を受けました。



今年見た面白かったアニメ

1位:『デュラララ!』電撃文庫
2位:『ヨスガノソラ』Sphere
3位:『私の足ながおじさん』世界名作劇場
4位:『ペリーヌ物語』世界名作劇場
5位:『バクマン』ジャンプ
6位:『新・三銃士』NHKの人形劇
7位:『マクロスF』
8位:『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』電撃文庫
9位:『ヘタリア』
10位:『忘念のザムド』

去年の『母を訪ねて三千里』や『小公女セーラ』には劣るものの、
『私の足ながおじさん』も『ペリーヌ物語』もやはり面白い。
大人になってから見ると考えさせられます。
例えば足ながおじさんが弱冠27歳に過ぎないことなど。
そしてまた、デュラララをはじめとする電撃文庫など、
ラノベ界の活気を感じました。
デュラララは私の地元、池袋を舞台にしていることもあり、大好きです。


今年面白かったアニメーション映画(短編含む)

1位:『夜の鳥』ベルナール・パラシオス
2位:『話の話』ユーリ・ノルシュテイン
3位:『黄金の森の美女』ベルナール・パラシオス
4位:『道成寺』川本喜八郎
5位:『涼宮ハルヒの消失』
6位:『トラブルメーカー』ベルナール・パラシオス
7位:『ドラえもん、のび太と鉄人兵団』
8位:『アリス』ヤン・シュヴァンクマイエル
9位:『詩人の生涯』川本喜八郎
10位:『木を植えた男』フレデリック・バック

パラシオスの『夜の鳥』には強く影響を受けました。
ヨーロッパ、特にフランスのアニメーションは日本と違い、
切り絵アニメーションが主体ですから、独特のシュールさがあり、
内容、音楽、展開、すべてに魅力を感じました。
ノルシュテインのそれも、素晴らしかった。
日本はセルアニメーションが主体で、それに慣れ親しんでいると、
さもそれが主流のような気がしてしまいます。
しかしヨーロッパには、最近駄作だらけのジブリと違い、
傑作を生む、知られざるアニメーション作家がたくさんいます。
トルンカに学んだ、川本さんの魂の入った人形劇も秀逸。
『ハルヒ』は、タイムパラドックスを利用した、SFもので、
それまでの内容をしっかり把握していないと楽しめませんので、
これを見る前に、すべてアニメを見ておきましょう。



今年聴いた素晴らしい音楽(CDアルバム)

1位:『Köln concert』キース・ジャレット
2位:『Forever begin』山中千尋
3位:『ソロ・コンサート』キース・ジャレット
4位:『Tabula Rasa』アルヴォ・ペルト
5位:『8つの演奏会用エチュード』ニコライ・カプースチン
6位:『キャラバン・サライ』サンタナ
7位:『アギーレ』ポポル・ヴー
8位:『L'Autre』ミレーヌ・ファルメール
9位:『モンポウ・沈黙の音楽』高橋悠治
10位:『天使のミロンガ』ギドン・クレーメル

こうしてみると、ジャズ多いですね。
確かにジャズばっかり聴いているからです。
あとはクラシック。
山中千尋さんはさすがにバークリーを主席で出ているだけあり、
とてもドラマチックな展開を見せる演奏を聴かせてくれます。
サンタナの『キャラバン・サライ』は、インプロビゼーションロックの頂点。
ポポル・ヴーはドイツのバンドで、本作はヴェルナー・ヘルツォーク監督による、
72年の映画『アギーレ・神の怒り』のサントラです。
映画もさることながら、音楽がまた最高。
カプースチンはヴィルトオジテに脱帽でした。

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プロフィール
HN:
海馬浬弧
性別:
女性
自己紹介:
言語学者、哲学者、文学者、サイバネティック学者である、
海馬浬弧による本、映画、アニメ、音楽、その他、
あらゆることに関するレビューログ。
私生活については一切書きません。7カ国語堪能。
独断と偏見に充ち満ちているため、不快に思われる方もいらっしゃるでしょうが、これも現代の歪みの一つだと思って、
どうかお許し下さいませ。
リンクは才能豊かな知人の方々なので、ぜひ。
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