あらゆる事柄に関するレビューログ。
#kaibaricot
2004年。クリストフ・オノレ監督。
イザベル・ユベール、ルイ・ガレル。
フランスの思想家であり小説家、ジョルジュ・バタイユの『わが母』を映画化。
もしもフランス文学に多少親しみのある方であれば、バタイユという作家が、
いかなる作家であるのかご存知でしょう。
面倒なので、バタイユについては語りません。
この映画のことだけ言うと、ルイ・マルの好奇心よろしく、母子もの。
しかし、つくづく思うのが、『好奇心』のマッサリのほうがよかったということ。
ユベールは確かに綺麗ですよ。
でも、いかんせん痩せぎすで、肉がなさすぎる。
そのせいか官能性に欠ける。
放埒な母というのが、どうもしっくりこない。
彼女はいつもかっこよくて、
なんだか憂鬱そうな顔ばかりで、快楽に臨む姿はまるで、
苦虫を何匹も噛みつぶしたような、渋い顔でした。
そのせいで、どうも背徳的な悦楽みたいなものがない。
ルイ・ガレルも、快楽に墜ちていくのが全く楽しくなさそうで、
二人ともまるで修行僧。
これでは意味がない。
そのうえ、舞台をなぜ、あのようなヌードビーチがあるような、
開放感溢れるところにしたのか。
似たようなテーマを扱う、今村昌平の『日本昆虫記』のごとく、
フランスの土着的な田舎のほうがよかったと思うのは私だけでしょうか。
退屈な映画です。
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1998年。セドリック・カーン監督。L'Ennui
シャルル・ベルラン。
原作はイタリアの文豪、モラヴィアの小説。
それをフランスに置き換え、多少設定をいじっているよう。
ただし、原作を読んだことはないので、
どの程度、原作を変えているかはわかりません。
あくまで映画だけの印象を言いますと、
見始めてから2秒で、「ハズレた」と確信、間違っていませんでした。
なんとも思わせぶりで、感傷的なつまらない台詞からはじまるのです。
そのうえ、驚いたのがヒロイン。
全く魅力的でない。
というのもかなり太っている。
冗談抜きで、相当太っています。
フランス人の中でもかなりぶさいくな部類に入ること間違い無し。
しかし、主演のシャルル・ベルランの、神経質て嫉妬深く、
ひどく馬鹿げた、小物の教授役の演技は、物凄くうまい。
彼の演技は凄すぎる。
ラストも無茶苦茶な終わり方で、見ない方がマシな映画かもしれません。
1981年。フレドリック・アンドレイ。ウィルヘルミナ・フェルナンデス。
80年代フランス映画の幕開け。
ジャン=ジャック・ベネックス監督の処女作にして最高傑作。
処女作にして最高傑作というのは、なんかかわいそうな気もしますが、
仕方ない。それは紛れもない事実です。
次作『溝の中の月』も確かに悪くない。
しかし、『DIVA』かなあと思う。
ファンも多い、『ベティ・ブルー』や
『青い夢の女』なんかはカスみたいな映画です。
さて、
『DIVA』はその名のごとく、歌姫がヒロインで、
ウィルヘルミナ・フェルナンデスはそれなりに名の通ったソプラノなんです。
この映画内ではとりわけ、少しマイナーなオペラ作品『ラ・ワリー』が、
とても重要な役割を持って出てきます。
オペラをこれだけうまく映画の中で昇華した例は他にないでしょう。
絶妙なサスペンスと絡み合わせ、最後は一つの物語へと収斂する。
パリの郵便配達であるジュールは、大のオペラファンで、
殊にシンシア・ホーキンス(ウィルヘルミナの役)を、
その類い希な声から敬愛し、それに止まらず、恋愛感情を抱いてもいた。
彼は、自分一人で彼女の曲を楽しむために、パリ公演の際、
公演を録音してしまう。
そのうえ、楽屋でサインを貰った後、ドレスを盗み出す。
しかし、録音をかぎつけた台湾のレコード会社が、
CD化を拒み続けるシンシアに、
録音テープから海賊版を出してしまうと脅し、
自分たちと専属契約を結ぶよう迫る。
それを知ったジュールは自分の録音テープを処分しようとするのですが、
全く別の事件、パリの娼婦達の元締めを暴くテープと彼のテープが混ざり合い、
ジュールは同時にいくつかの組織から追われる羽目に。
一体、この窮地をどう切り抜けるのか——。
ガジェットで溢れる画面は新鮮で、スピード感もあります。
そして、ジュールとシンシアの切ないラブストーリーも絡み合う。
基本をしっかりおさえた映画なので楽しめます。
ぜひ。
オリヴィエシェフ。
美味しい。
非常に美味しい。
洗練されたフレンチレストランです。
よく行く、パティスリー、エコールクリオロさんのブログ上で知りました。
先日、伊勢丹などでサロン・デュ・ショコラが開かれた際、
会期中に来日していたパティシエ界を代表する重鎮たちが、
クリオロのサントスさんと一緒に、シェ・オリヴィエに行かれ、
とても美味しかったと太鼓判を押しているのを拝読し、
どうしても行きたくなりました。
だって、フランスパティシエ界の、
ブイエさんや、パスカル・デュピュイ氏など、
そのへんの舌の肥えた大御所の方々が美味しいというのだから、
間違い無いと思ったわけです。
行ってみて思ったのですが、古典的なフレンチというより、
非常に創作的要素の強いフレンチです。
私は前菜を、
フォアグラを詰めた豚足の温製サラダ風。
メインを、
仏産ウズラのロティ、きのこの詰め物、オーガニックえんどう豆のピュレ添え。
デザートを、
キャラメル風味のチョコレートムース、
炭を練り込んだオーガニックソルトと共に。
Nicot氏は、
前菜、
サーモンマリネ、グラヴラックス風、じゃが芋のブリニと酸味を効かせたクレム。
メイン、
鱈のブランダード、にんにくのクレムー、チョリソのチップス添え。
デザート、
苺の即席タルト、苺のソルベ添え。
・・・・はっきり言って、
今まで食べたフレンチの中でも、一番美味しかった。
どれこもこれも、独創的で、
新しい刺激を受けること間違い無しの、感動的な料理です。
シェフのオリビエさんとも何回かお話でき、
マカロンをサービスして頂き、とてもsympathiqueで、
シックなお店です。
ここは絶対行った方がいい。
星を獲得する日も近いと思われます。
市ヶ谷からも近く、コストパフォーマンスは最高。
ぜひ。
甲斐瑞恵さん作『チャイコン』
(甲斐さん、作品の画像をお借りします)
現在、
タンバリン・ギャラリーにて開催中の甲斐さんの個展に行ってきました!
個展タイトルの通り、アドレナリンが放出すること間違い無し。
甲斐さんの力強い勢いを、身体的に感じる、素晴らしい個展です。
以下、色々と私見で大変恐縮ですが、
甲斐さんの作品について私なりに論じて見ようと思います。
これまでの甲斐さんには、二種類作品の群があるように思っていました。
それを乱暴な言い方で分けてしまうと、
第一に、甲斐さんの精神生活を反映したかのような、
暗い情熱を湛え、それでいて知性を感じる、独特な作品群。
そして第二に、茂木健一郎さんの作品の表紙や、
文月あやさんの『まごまごたまご』の表紙などの、
どちらかというととっつきやすい、
単純化された温かい絵が特徴の作品群。
しかし、今回の『アドレナリン・ママ』は、
甲斐さんがHPで書かれているように、
新たに「ポップ」さが明らかに加わっているのです。
それは、ドットという手法にも現れていると思います。
しかも、背景や、様々な場面に用いられたドットが絶妙な効果を出し、
人物が非常に映える。
まるで浮き出ているかのような効果があります。
ギャラリー内で、遠くから作品を見ても、
描かれている人物がぐっと迫ってくるというか。
描かれている人物は、その筆致などから、甲斐さんのこれまでの、
暗い情熱を湛えた作品群に属しているのですが、
ドットや単純化された背景と合わさることにより、
すばらしい化学反応をおこし、
結果、とてもエネルギーのある作品に仕上がっているのです。
次に、甲斐さんの描く人物やテーマについて考えて見ますと、
文学ないしはクラシック音楽からインスピレーションをうけたものが、
非常に多いということに気づかされます。
今回の、個展タイトルである『アドレナリン・ママ』は
ブローディガンの詩です。
作品の主題から、甲斐さんの知性というか、精神性の深さを感じます。
そういったアプローチからも、
甲斐さんの作品を楽しむことが出来るのです。
クララ・ハスキルとは、渋い!
しかし、もちろん文学でもクラシックでもない主題の作品もあり、
私個人的には、出展されている『まあ坊』も大好きです。
というのも、ユーモアを大切にする甲斐さんの人物には、
どこか戯画のような味わいがあり、その眼差しにはペーソスが溢れているからです。
『まあ坊』には特にそれを感じます。
『男と女』も、眼差しがアルカイックな感じで印象的でした。
甲斐さんが描く人物の眼差しは、甲斐さん自身の、
力強く印象的な眼差しのような気がします。
私の中では、今回の甲斐さんの個展には、
『ユーモアと眼差し』という隠れたテーマを感じました。
展示は明日までなので、ぜひ行ってみて下さい!
素晴らしく力強い展示です。
追伸。
個人的なことを書くと。
甲斐さんの、とても真面目で、人見知りで、
愛らしいキャラクターも、ギャラリーの中で花咲いておりました。
いや〜面白かったです。
甲斐さんのプロフ写真、絶対私に撮らさせて頂きたい、
とつくづく思いました。
アニメーション化の話も今度もっとしたいです。
とにかく、アドレナリンが出っぱなしの、『アドレナリン・ママ』でした。
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私生活については一切書きません。7カ国語堪能。
独断と偏見に充ち満ちているため、不快に思われる方もいらっしゃるでしょうが、これも現代の歪みの一つだと思って、
どうかお許し下さいませ。
リンクは才能豊かな知人の方々なので、ぜひ。
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