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あらゆる事柄に関するレビューログ。 #kaibaricot
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私が近頃VOCALOIDにどっぷりはまっているのを、
お気づきの方もいらっしゃるでしょう。

なぜ、VOCALOIDにはまったかについて少しお話します。

きっかけは初音ミクの『Tell your World』でした。
Google ChromeのCMで初音ミクのこの曲を聴いたこと。
……もちろん、以前からミクの存在は知っていました。
特徴的なエメラルドグリーンの髪の毛。
歌を歌うということくらいは知っていたけど、
それがVOCALOIDというソフトであることは全く知らなかった。

で、
なんとはなしに、iTune Storeで「初音ミク」と検索してみました。
すると『Tell your World』が出てきて、安価だったので買ってみたのです。
その後、iTune上で人気の高い『千本桜』を知り、
さらにミク以外のキャラクターが存在することや、
それぞれのキャラのもとになった声優さん、歌手、
得意な音域等を知るにつけ、
気がついたらVOCALOIDの世界にはまっていたというわけです。


自慢の一種ですが、私は語学で鍛えた耳を持っているので、
耳には結構自信を持っています。
あまり意味のない能力ですが、人の声の聞き分けは殊に得意です。
また、語学をやればやるほど、
様々なジャンルの音楽を深掘りできるようになりました。


それで何が言いたいかというと、
VOCALOIDは侮れないということです。

なんと言っても世界観。
VOCALOIDの曲で特徴的なのは、
結構独特な世界観を表現しているものが多い。
標題の『ダブルラリアット』もその一つ。
はっきり言うと、意味はよくわからないけど、
明らかにAKBとかが歌う、夏なら夏の歌みたいな、
そういう薄っぺらい漠然とした曲ではない。

中島みゆきさんの歌が独特な言い回しを用いて、
みんな言葉にしないけれど密かに持っている幻想を歌った
「悪女」のような、奇妙な爽快感があります。

同じことは鏡音リンの代表曲『炉心融解』にも言える。

この曲は今ではちょっと問題のある曲ですが……

やはりこの曲の歌詞も面白いです。
「君の首を絞める夢を見た。光の溢れる昼下がり。
君の細い喉が跳ねるのを。泣き出しそうな眼で見ていた。」
こういうダークな歌詞は普通の歌手は歌わないでしょう。
歌えるとしたら浅川マキくらいだろうけど、
実際にはこういう歌は歌っていない。



そしてやはり初音ミクの『初音ミクの消失』こそ、
VOCALOIDのすべてを歌った歌であると思います。
とてもよく書けている歌詞です。
この曲はライブが凄いのですが、歌詞を理解するためには
プロジェクト・ディーバじゃないとわからない。


……私は思うのですが最近の曲って一つもいい歌詞がない。
卒業のシーズン、結婚の曲、どれもこれも万人受けするように
曖昧なことばかり歌っていて、全然響かない。

個人的で私的な邪道のほうが私は自分に共振するのです。
私自身、邪道で行こうと思います。




デュエット曲。
まるでWink

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アゴタ・クリストフの『悪童日記』三部作に続く作品。


『悪童日記』三部作のおもしろさとは別種のおもしろさがあります。
個人的に共感もできる部分もあり、切ないお話です。
もちろん、どこに私が共感したかは書きませんが。

なぜ、アゴタの書く小説はこんなにも面白いのでしょうか。
私はそれを考えて見ました。
たぶん、それは彼女が淡々と書いているからだと思います。
人によっては感情過多で書いてしまいがちな状況を、
彼女は無感情に、且つ簡潔・適確に描きます。
その姿がひどく小気味いい。


本作『昨日』は、アゴタのスイス亡命時、
時計工場に勤めた経験を一つのモチーフにし、
発展させた傑作中編です。

工場労働(ひいては工場的な現代の労働)ということが、
この物語で重要な部分を占めていると私は思います。

ただし、もちろんそれだけではありません。

昨年より
アゴタ・クリストフの作品を読んでおりますが、
本当に凄い作家ですね。

つくづくそう思います。

樋口一葉の代表的な3つの短編を映画化。
はじめに『十三夜』丹阿弥谷津子、芥川比呂志。
次に『大つごもり』を私の好きな久我美子。
最後が『にごりえ』で最近お亡くなりになった淡島千景、山村聡、宮口精二。

樋口一葉のこれらの小説は、前に読もうとして挫折しました。
どうも歴史的仮名遣が苦手で、読み切れなかったのです。
24歳で亡くなった樋口一葉を知る上で、
映画から入るというのは、
入門者向けで良いのではないでしょうか。

話はいずれも結構面白いです。
そして演出も決して派手でなく、いいと思います。
殊に『にごりえ』は面白かった。

もう一度小説にチャレンジしてみようかな、と思いました。

今井正監督は恋愛映画の傑作『また逢う日まで』
社会派の『真昼の暗黒』、『キクとイサム』などがあります。
現代ではあまり顧みられない監督の一人かと思いますが、
いずれも粒揃いです。

樋口一葉の小説に挫折したなら、ぜひ映画から入ることをお薦めします。

1957年、増村保造監督作。
根上淳、野添ひとみ、左幸子、船越英二。


この映画も、以前ご紹介したことのある、
文藝春秋社刊の『日本映画ベスト150』の50位くらいに載っていました。

しかし、この映画、今見てみると全く面白くない。
それどころか、つまらない、馬鹿げた映画でさえあると私は思う。
ただ、それでも発見はいくつかあります。
1、野添ひとみさんが綺麗であること。
2、左幸子は相変わらずエネルギッシュでエキセントリックな役
    がとても合っているということ。
3、病院というところの旧体質さは今も昔もそう変わっていないな、
    ということ。

そしてこの映画の演出がうるさい感じなんですね。
台詞が多すぎるし、増村さんの悪いときの癖で、
まるで私の大嫌いな市川崑みたいなテンポの映画にしている。

増村監督には何本か傑作もありますが……
イタリアのチェントロで学んだ、風変わりな監督でもあります。

でもこれは面白くないですよ。




シオドア・スタージョンの代表作の一つ。
1950年に書かれた傑作小説です。


この小説に纏わる、個人的なエピソードを一つ。


実は、この本を読むのには二ヶ月くらいかかりました。
仕事で通勤の行き帰り、そして寝る前にコツコツ読んでいました。
……ちょうど半ばくらいまで読んだ3月終わり頃。
飲み会で、非常に大量に飲んだことにより、
鞄の中にゲロってしまい、この本も死亡。
その日は、記憶もところどころしかなく、気がついたら埼玉県の
山手通りを歩いている始末で、紆余曲折を経、家に帰ったのは午前3時過ぎ。

面白い本だったので、どうしても最後まで読みたくて、
またこの本を買い直しました。
三分の二ほど読んだ頃、
先日の飲み会で、また浴びるほど飲み、鞄にゲロってしまった。

こうして『夢見る宝石』は二度、死んでしまいました。

悔しくてまたこの本を再度買いました。
同じ本を三冊買うという失態。馬鹿ですね。

で、ようやくたった今、読み終わった。


……そういうわけで、思い入れの深い小説なのです。
もちろん、三冊も買っただけの味わいはありました。

スタージョンという作家はは非常に優れていますが、
あまり知られていません。
最近、河出からスタージョン作品が多数復刻されて、
手に入りやすくなっています。
難解、と言われていますが、わたしはそんなことないと思う。
むしろ、独創的、という言葉が相応しいでしょう。
ちょっと独創的過ぎるために、難解と言われるだけで、
物語中の哲学や論理、話の筋道は決して難解ではない。

難解ではないということは、つまり、
私には作中人物の心理の展開がしごく論理的なものとして、
理解できるということです。


スタージョンは根っからの職業作家であると私は思う。
その理由として、第一に、
彼の物語の語り口はあくまでさりげないのに、
それが壮大な物語へと繋がる点。
いい小説の条件は、絶対にさりげなく始まる。
いまから話をはじめるぞ〜っていう感じではなく、
まるで何かの話の途中であるかのように、始まるのです。
次に、スタージョンの文章には個性的な捻りがあり、
ストーリーも確固たる構成を持っている点から、
わたしは彼をして卓越した職業作家であると考えるのです。


SFという括りから、本作は早川文庫に入っているものの、
むしろル・グウィンなどの幻想文学に近いと考えます。
(ル・グウィンも早川にありますよね)
彼の文学は普通の純文学的、散文的な世界をモチーフにしていない。
にもかかわらず、彼の描く世界は我々の世界より、
心理の中においてはより人間的なものを描き出す。
とても風変わりな発想を物語の骨子としているため、
SFという範疇に、とりあえず入れられている、という具合でしょうか。

彼の代表作には1953年に国際幻想文学大賞を受賞した『人間以上』、
あるいは『時間のかかる彫刻』、『一角獣・多角獣』などが知られています。
私はこれらをまだ読んでいませんが、ぜひとも読みたいと思いました。

非常に面白い小説です。
なんだかうさんくさい、面白くなさそうなタイトルかもしれません。
わたしもそう思っていました。
なんかださいタイトルだなと。
だから、本当に面白いのか?って読む前までは思っていました。


でもラスト付近はとても詩的だし、スリリングでさえあります。
夢を終わりまでしっかり見続けること、
不思議な味わいのある傑作でした。



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海馬浬弧
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自己紹介:
言語学者、哲学者、文学者、サイバネティック学者である、
海馬浬弧による本、映画、アニメ、音楽、その他、
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私生活については一切書きません。7カ国語堪能。
独断と偏見に充ち満ちているため、不快に思われる方もいらっしゃるでしょうが、これも現代の歪みの一つだと思って、
どうかお許し下さいませ。
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